「壁ノ花団」は水沼健が2004年に立ち上げた演劇ユニット。作・演出を水沼が担当する。京都を拠点に活動を行い、これまでに10作品を上演。第一回公演『壁ノ花団』で第12回OMS戯曲賞大賞を受賞。第四回公演『アルカリ』で十三夜会奨励賞受賞、第六回公演『ヤングフォーエバー』で佐藤佐吉賞・最優秀照明賞(吉本有輝子)、最優秀舞台美術賞(西田聖)、優秀演出賞などを受賞。第七回公演『ニューヘアスタイルイズグッド』では第57回岸田國士戯曲賞の最終候補に選出された。
瀬戸内海に浮かぶ小島に突然巨大な橋がかかる。あまりに巨大すぎたため島民たちは気づかないのか、以前とあまり変わることなく暮らしている。そこに兄弟がいる。母の死を受けて、兄弟のうち一人は変わろうとしている。一人は何もしない。同僚の音楽教師に淡い気持を抱えているにもかかわらず。音楽教師は島の外からやってきた。生まれてこのかた一度も泳いだことはないが水着を一つ持っている。いつそれを着るのかという問題。
ママンが死んだ。ママンは死ぬ前わたしに、父親の名前と、父親がいるという島の名前を教えてくれた。かならず会いに行って、そしてこう言うんだ、わたしたちのものを残らずぜんぶ寄こせって、わたしたちがあたりまえにもらってなくちゃいけないものをなにひとつもらっちゃいないんだからって、と言った。しばらくしてママンは仏頂面のまま死んだ。誰かがお悔やみを言いに来るかと思っていそいで部屋をきれいにして待っていたけど誰