川沿いのマンションに暮らす中学校の英語教師、辻さゆりは部屋のベランダから眺めるその川の景色が好きだった。街の灯りが川面に映り、ゆらゆらと揺れる川の景色が好きだった。ある日、彼女は近所のスーパーで女性が万引きするのを目撃した。缶入りのミートソースだった。一瞬、目が合ったが気付いていないフリをした。しかし彼女は、その女性がおそらく自分と同じくらいの年齢だったこともあり、軽い衝撃を覚えた。その日から彼女
ある日、彼は同僚の女性にひどく怒られた。しかし3日後、その内容をどうしても20パーセントしか思い出せないでいた。鮮やかに憶えているのは彼女の前歯についていた口紅の色だった。