タクフェス第9弾
2021年。新型コロナウイルスによってエンターテインメントの在り方が大きく変わり続けるこの年にタクフェスが上演するのは、宅間孝行の最新作『天国』。舞台は宮城県石巻市にある“山田劇場”。ここに集う人々の何気ない日常。どれだけ世の中が変わっても、変わらない毎日を過ごしてきた彼らが直面した、あの日――。
時間に打ち捨てられた湖畔の劇場は今や無人の廃墟。のはずが、何かが中で蠢いている。貝殻がうず高く積まれた山から異臭が漂う。真夜中に群れる真っ黒な浮浪者の影。彼らはヤチマタの境を越えてやってくる。魔人猿田彦が巡回する半透明有刺鉄線の柵を隔て、ヒラフ貝の吐息が織りなす脆弱な虚構の物語と、荒野をさすらう流賊達の無頼な生き様が、渦を巻いて混ざり合い、警告の鐘を奏で、やがて湖底の怪物の目を覚ましてしまう。