中国地方は、三次盆地の一寒村—―。十六歳のセキが、この地で「流れ者」と呼ばれている茂市のもとへ嫁いできたのは、明治29年の初夏の事であった。郵便配達人をやっていた茂市が、大地主の七敷の家に奉公に上がっていたセキを見初め、「おまえ、わしと連れなうきがあるか」とその思いを告げたのがきっかけだった。しかし、それは決して周りから祝福されたものではなかった。親代わりというべき七敷の家からは縁切りされての嫁入
青年オーランドは実兄オリバーに疎まれ不遇をかこっている。ロザリンドと恋に落ちるが、現公爵の不興を買い、父の忠臣だったアダムと共に森に逃れる。同じく追放されたロザリンドは、旅の危険を避けるために男装して“ギャニミード”を名乗り、シーリアと召使のタッチストーンを伴い森に向かう。森で暮らすオーランドの頭の中はロザリンドのことばかり。そこに“ギャニミード”が現れ、恋の相談を受ける。二人の倒錯した恋愛ごっ
東京芸術劇場が2015年に初めて制作した、こどものためのオリジナル作品。原作は松尾スズキの文/絵による 『気づかいルーシー』(千倉書房)、脚本・演出はノゾエ征爾。主人公のルーシーと、育ての親のおじいさん、飼い馬が互いに気づかいしすぎるあまりに引き起こす残念な悲喜劇が、オリジナルスコアの生演奏に乗せて、歌あり踊りありで展開する、ほろ苦くも楽しい舞台。2017年の再演に続き、2022年に再再演をおこな