今作は過去編と未来編の連作である。過去編は〈日差し〉の視点から〈森〉との婉曲しながらもシンプルな関係が描かれる。物語は二人の別れから始まり、その末、日差しは見たことはあるけどいつもと違う、過去とも未来ともつかない空間に漂着する。未来編では日差しと森の娘である〈春望〉が主人公となり〈陽子ひいばあちゃん〉を探す旅に出る。またインタールードとして現われる〈せかい〉の存在が作品世界全体を複雑に揺り動かす。
〈あらすじ〉地方都市。妹とその兄は小さな街で行方不明になる。お互いの存在の中のみで。2人は同じ街で生活を続けている。どこにも行けないままどこかへ消えた家族を思ったり忘れたりしながら。ある時、兄は思い出す。2人がすれ違う過去と、そのバスの行き先を。