暗闇の中に響く「こえ」。「相手」は誰? 相手が「自分」ならば心の内との会話で、いつも暗闇の中を手探りで歩いている。外に広がる宇宙だけではなく、自身の中の「宇宙(暗闇)」。これに意識を向ける。この宇宙(的)孤独に意識を向ける。私たちはこんな場所にいる。暗闇を「あっちからこっちに流れていくだけ」の存在。「こえ」があり、「見る」ことはできる、それが唯一の私たちの「存在」を示している。
複雑な人はなんでもない顔をしている。優しさゆえに心の傷を隠し、自分に嘘をついて暮らす人たちが自由を獲得するまでのいくつかの形を、個性ある登場人物たちで描く。曖昧な自意識で生きる華子。夫を介護する愛人。踊る愛人の娘と友人。生きる意味を探す息子。この家族がホームレスの協花と出会うことで変わる、家族の解体と再生の物語。女性の自由を奪う見えない抑圧に輪郭をひき、個人の尊厳が守られる新しい共同体の姿を探す。
