ええ、私はサイパンを離れずに、ずっと待っていましたよ、あなたを。 だってそうでしょう。日本は戦争に負けたことなんて、一度っきりもないんですから。米軍との激戦、日本軍の玉砕。タッポーチョ山のゲリラ戦、バンザイ・クリフでの集団自決。そして、東京大空襲・原爆投下の爆撃機は、ここから飛び立った──。太平洋の小さな島、サイパン・テニアンが日本領だった、二十九年間。その終止符を打ったはずの戦争を、私たちはほん
極小空間である梅ヶ丘BOXに作られた『斜面』を、炭鉱の坑道や戦時下に人々が隠れる洞窟、または永久機関の実験室など様々な場所に見立て、劇中人物が「なにもしない」「なにもおきない」という現象を仮構する。原発内の作業者や炭鉱の抗夫たち、戦時下、洞窟に逃げ込んだ人たちのような危険と隣り合わせの日々を送る人たちにとっては、「なにもおきない」、つまり日々の営みを無事に終えられることこそが何より大切なのだと気づ