川沿いのマンションに暮らす中学校の英語教師、辻さゆりは部屋のベランダから眺めるその川の景色が好きだった。街の灯りが川面に映り、ゆらゆらと揺れる川の景色が好きだった。ある日、彼女は近所のスーパーで女性が万引きするのを目撃した。缶入りのミートソースだった。一瞬、目が合ったが気付いていないフリをした。しかし彼女は、その女性がおそらく自分と同じくらいの年齢だったこともあり、軽い衝撃を覚えた。その日から彼女
洋食屋を営む水野洸一は人前でご飯が食べられず、妻である里奈ともここしばらく食事を共にしていない。二人は10年以上付き合って結婚し、初めての人と結ばれた「理想の結婚」と周りから囃し立てられているが、里奈は洸一以外を知らない事に不安を抱えている。店の向かいにはテレビや雑誌で取り上げられる店が立ち、洸一は店の再起や関係の修復もかけて、人前で食べられない事の克服を測る為、治療に通い始める。それから再び里奈