世田谷パブリックシアター+KERA・MAP
世田谷パブリックシアター+KERA・MAP
1936年(昭和11年)の秋。
日本のどこか。東京から遠く離れた、ちいさな島のちいさな港町。
この町にたったひとつだけある、ちいさな映画館「梟島キネマ」。
この映画館の常連客である森ロハルコは、
時間があれば客席に座り、繰り返し上映される同じ映画を観ている。
洋食店に勤め、失業中の夫の生活の面倒もみているハルコにとって
映画だけが唯一の楽しみ、映画を観ているときだけは夢を見ることができた。
今日もまた、ハルコはスクリーンを見つめている。
カタカタと映写機が映しだしているのは、『月之輪半次郎捕物帖』。
主人公「月之輪半次郎」と「間坂寅蔵」らが妖怪相手に立ち回る、オールトーキーの本格的娯楽時代劇であり、「間坂寅蔵」を演じる高木高助という俳優は、ハルコのお気にいりだった。
悲しいときもつらいときも、映画の中の彼は彼女を笑顔にしてくれた。
もう何度観たかわからないその映画を微笑みながら楽しんでいるハルコ。
すると突然、銀幕の向こうにいたはずの「間坂寅蔵」が目の前に現れる。
驚きながらも憧れの人物を前にしたハルコは、夢の世界に誘われるように、「寅蔵」とふたり、映画館を飛びだしていく。
一方、「寅蔵」不在の"映画の中"は大混乱。観客たちも騒ぎだし、時を同じくして撮影で梟島を訪れていた高木高助は、自らが演じる「寅蔵」の行方を探し始めることになる。
「寅蔵」も高助もハルコに出会い、ひと目惚れ。こころを惹かれていく。
そして、ハルコもまた、ふたりに恋をする。
現実を知らない無垢な「寅蔵」と味わう、おだやかな幸せ。
高嶺の花と思っていた高助と分かち合う、奮いたつ喜び。
虚構と現実、憧れと生活の狭間で揺れ動くハルコのこころ。
ハルコの恋の行方は──。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
三軒茶屋にある世田谷区運営の公共劇場・世田谷パブリックシアターと、
KERAが主宰するKERA・MAPが共同で企画した。