楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~
『楽屋』は清水邦夫氏の代表作で、日本で最も多く上演されている戯曲といわれる。チェーホフの『かもめ』や『三人姉妹』、シェイクスピアの『マクベス』、三好十郎の『斬られの仙太』などの戯曲をはじめ、さまざまな文学作品の言葉がふんだんに引用されている。登場人物は『かもめ』のニーナ役の女優と、その上演中の楽屋に住み着く女優だった幽霊の4人。名セリフの引用は、名作へのオマージュであるとともに、女優たちの腕くらべの様を呈し、演じ手や見る者を惹きつけて止まない。役に固執する女優たちの姿は、なぜ演じるのか、なぜ生きるのかという作者の問いかけでもあろう。本映像は、蜷川幸雄の演出助手を務めていた演出の大河内直子とプロデューサーの田窪桜子による演劇ユニット、unratoの企画の公演。バックグラウンドの異なる女優たちの競演が見どころのひとつだ。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
オンデマンド配信。
unratoは演出家・大河内直子とプロデューサー・田窪桜子による演劇ユニット。『I DO! IDO!』(2014年、霧矢大夢が読売演劇大賞優秀女優賞)で活動をスタート。『THE LAST FLAPPER』(2016年、2017年)、日本初演『BLOODY POETRY』(2018年)、日本初演『受取人不明 ADDRESS UNKNOWN』(2018年、2019年)、『メアリー・ステュアート』(2020年)、『Our Bad Magnet』(2023 年)など翻訳作品のほか、日本の戯曲では、木下順二作『冬の時代』(2020 年)、三島由紀夫作『薔薇と海賊』(2022年)などを上演している。
大河内直子(おおこうち なおこ)
1992年、英国王立演劇学校に日本人で初めて入学。演出とプロダクションマネージメントを学ぶ。英国で蜷川幸雄に出会い、卒業後は日本で蜷川の海外公演を中心に蜷川作品の演出助手を担当。2017年、「unrato」を結成。主な演出作品は『犀』、『I DO! IDO!』、『THE LAST FLAPPER』、『BLOODY POETRY』『受取人不明 ADDRESS UNKNOWN』、『メアリー・ステュアート』、『冬の時代』『薔薇と海賊』など。
清水邦夫(しみず くにお)
劇作家、作家、演出家。1936年1-2021年4月15日没。早稲田大学文学部卒業。美術科から演劇科へ転科した1958年、処女戯曲「署名人」(初演1960年)がテアトロ戯曲賞と早稲田演劇賞を受賞。卒業後、岩波映画製作所に入り、退社までの5年間、映画のシナリオを手がける。 1972年、蜷川幸雄らと櫻社を結成。1974年には「ぼくらが非情の大河をくだる時」で第18回岸田國士戯曲賞受賞。同年櫻社解散。1976年、松本典子らと演劇企画グループ木冬社を結成(現、演劇企画木冬社)。第1回公演の「夜よ おれを叫びと逆毛で充す青春の夜よ」で第11回紀伊国屋演劇賞個人賞受賞。以降、「わが魂は輝く水なり」で泉鏡花賞、「エレジー」で第35回読売文学賞戯曲賞(1983年)、「悪童日記」「わが夢にみた青春の友」で第29回紀伊国屋演劇賞団体賞(1994年)など、受賞多数。2002年、紫綬褒章。