ヒエラルキーのない関係性で実験的な創作に臨むドイツの女性パフォーマンス集団、She She Popは、ベルリンの壁によって東西にそれぞれ分かたれて育った女性たちや、メンバーの実母など、さまざまな人々とその人生の物語を舞台の上に招き入れてきた。
思春期の少年少女たちの悲劇を描いたフランク・ヴェデキントの戯曲『春のめざめ』と、強烈な性描写で議論を巻き起こしたE.L.ジェームズのベストセラー官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』をモチーフにした本作では、老若男女の出演者がShe She Popと共演。彼/彼女らは、性教育の教室で先生と生徒を入れかわり立ちかわり演じながら、みずからの身体そのものと、そこに蓄積されてきた「恥」をあられもなく晒していく。セックスとはなにか? なにが女を女に、男を男にするのか? 子どもはどこまで知っている?
性の経験は絶えず変わる。その規範も葛藤も、政治や歴史やイデオロギーからは逃れられない。大きなスクリーンでは、ライブカメラで捉えられた出演者たちの身体が性別も世代もごちゃまぜにコラージュされうごめいている。グロテスクで滑稽なこのキマイラは、もしかすると、個人という境界が溶けさったわたしたちの新しい身体なのかもしれない。
※以上、2018年時点の情報
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1998年代にギーセン大学応用演劇学科専攻の卒業生によって結成された女性パフォーマンス集団。ゼバスティアン・バーク、ヨハンナ・フライブルク、ファニ・ハルンバーガー、リーザ・ ルカセン、ミーケ・マツケ、イリア・パパテオドル、ベーリット・シュトゥンプフを始めとする、メンバーのほとんどが女性。クリエイティブ・プロデューサーはエルケ・ヴェーバー。レパートリー劇団の持つ既存のヒエラルキーから飛び出して、集団的な作品制作と上演を行う。出演者自らが脚本、ドラマトゥルク、舞台美術を手がけ、実験的な作品を制作している。2003年以降、HAU Hebbel am Ufer theatre(ベルリン)との共同制作を展開。2010年には、リア王を脚色した『Testament(遺言/誓約)』でFavoritenフェスティバル(ドイツ)のWild-Card賞を、2011年にはFestival Impulse(ドイツ)でゲーテ・インスティトゥート賞を受賞。2013 年の『シュプラーデン(引き出し)』、2014年の『春の祭典ーShe She Pop とその母親たちによる』に引き続き、KYOTO EXPERIMENT 3度目の登場となる。
※以上、2018年時点の情報