東洋の精神性にも魅了された彫刻家ウィム・デ・ハーン(1913~1967)を追悼したダンスムービー(1976年)。
物語はアムステルダムにある「マヘレ橋」から始まる。十字架のような木彫りの作品を抱えて歩く石井満隆と、後を付いていく友人達。その後、ウィムが日本人の捕虜だったことを想起させるような囚われた一室でのおどりがあり、ウィムのアトリエで披露される石井の少女のおどりがある。最後は着物姿の石井が吊るされた男を演じ、終わる。
1939年小豆島に生まれる。日本大学芸術学部演劇学科在学中から石井漠にモダンバレエとモダンダンスを学び、東京青年バレエ団に参加。61年から土方巽に師事し「暗黒舞踏派」に参画。71年には、シベリア経由で渡欧し、舞踏家として最も早く海外で活躍した。1980年に帰国してからは、青森県青南病院で日本初の「舞踏療法」を開始するなど、精神医療にも大きな影響を与える。エキセントリックなエピソードにも事欠ず、野草料理を得意とした。主なシリーズ作品に「MU-dance」「自在」など。2017年死去。
石井の残した8ミリフィルムのリールより、1971年渡欧直前に茅ヶ崎で撮影されたと思われる映像と1979年デュッセルドルフのギャラリーと路上で撮影された映像を一つのデジタルファイルに編集している。石井は舞踏家として最も早く1971年に渡欧しイギリス、オランダ、ドイツ等で活発な活動を行った。
暗闇に「肉市」の文字がジワジワと燃えて始まる。客席から盲目の老婆をさらい舞台で三味線を弾かせ、華麗に舞う石井。その後、黒子4人に抱えられ妖しいストリップを披露する。大きな布を覆った獅子舞の如き怪物が舞台を旋回。狂気の石井が大鎌を振回し枯れ草男の正体を暴く。鉄兜を被った男を電気グラインダーで研磨し、火花と黄燐の鬼火が暗闇の世界を彩る。最後に出演者をステージ上に並ばせ、石井の感謝の舞いでフィナーレ。