カフカの生誕地プラハで開催された「カフカ国際演劇祭89」で上演。チェコ民主化により発禁だったカフカが解禁された記念すべきイベントだった。カフカの「城/巣穴」を原作に、1幕「土地測量師」、2幕は「城」に登場する二人の女性「フェリーダとアマリア」、そして3幕に「視座」と3つの角度から、カフカの世界が呼び起こす断絶や権力、関係の寄生性等を独自の視点で視覚的演劇的に抽出し、カフカ文学への新たな入口を提示した。
モレキュラ―シアターは、青森県八戸市在住の精神科医で演出家の豊島重之が率いる劇団。俳優陣は青森県や八戸市文化賞を受賞し地元に長く実績を持つ、姉の豊島和子創作舞踊研究所に在籍する女性ダンサーで構成されている。大久保一恵を筆頭とする強靭な身体表現と豊島の特異な視点からの前衛的、実験的手法で海外メディアから絶賛を浴び、東北演劇祭TATAやKAFKA COLLOQUE’89を開催するなど、辺境の東北から世界へとダイレクトな回路を繋いだ。