「母親が癌だった……」
語り手が唐突に話し出す。
場所はどこなのかはわからないが、職場やバイト先のような目的をもって強制的に集められる場所。語り手、ならびに聞き手たちはそこによく集まるメンバーで、仕事終りの、目的を果たした後のような時間をそこで過ごしている。
語り手の話を真剣に聞こうとしながらも、徐々に聞き手たちの頭の中はズレていく。育ってきた環境もこれまでの経験もみんな違う。自分の想像で話の余白を埋める。連想したり、脱線したり、妄想したり、集中力が切れて別のことを考えたりしながら、時間感覚さえも狂っていく。
そんな「きく」ということそのもののお話。
お笑いコンビ「クレオパトラ」長谷川優貴主宰の組合。メンバーの経歴は様々。
2017 年3月に旗揚げ公演『ゼンイとギゼンの間で呼吸する世界』を上演。以後、笑いと現代演劇のあわいを漂いながら独自の表現活動を続けている。劇団の名付け親は又吉直樹氏(ピース)。
曰く、「『アンニュイ』と『エンジョイ』を足した造語であり、物憂げな状態も含めて楽しむようなニュアンス」。