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窯元の煙突が立つ小さな街を見下ろす丘にある特別養護老人ホーム「桜花荘」その庭には樹齢80年の桜があった。長い間、人々の愚痴をひたすら聞き続けた桜の古木に「桜花荘」の住人久恵は自身を投影する。やがて言葉を発することが出来なくなった久恵は桜と同じように人々の愚痴を聞き続け、昔の流行歌と消息の分からぬ息子の記憶ばかりとなってしまう。辛うじて今年も桜の花を見ることが出来た久恵は、女たちから聞く男への愚痴を
アキはなぜコンクリートに囲まれた三角公園でテント生活をしているのか? 昭和51年アキの母、芳恵は十円易者「村上桂山」に出会っていた。苦労しながらも桂山の言葉に支えられ成長し母となった芳恵は「悩は財なり、貧は友なり、狂は師なり」と書かれたノート娘のアキに託してこの世を去る。昭和の松山に実在した十円易者が遺した言葉の数々が令和の現代に発動し、世を惑わす。昭和と令和、松山と神戸を舞台に物語は動いてゆく。