26年という短い啄木の一生の最晩年の3年間を、啄木の死の翌年、作品を残された妻・節子が回想するという形で描かれた本作は、貧しさと病に喘ぎながらも、人生の辛苦に耐え忍び健気に生きる啄木、また時に我儘で身勝手でそして剽軽な青年啄木の家庭劇でもあります。
進駐軍の占領下で、今日を生き抜くために人びとは闇の売り買いに必死だった。親を亡くし、子を亡くし、夫を亡くし、友を亡くした人びとが、世の中の新しい枠組みの中で、無我夢中に生きていた。ひとり息子の健太郎を戦地に失った愛敬稲荷神社の神主牛木公磨も、今では近くに住む五人の未亡人たちと寄り合って、闇米の調達に奔走している。そんなある夏の日。思いもかけず、死んだはずの健太郎が愛敬稲荷神社にひょっこりと帰還する