進駐軍の占領下で、今日を生き抜くために人びとは闇の売り買いに必死だった。親を亡くし、子を亡くし、夫を亡くし、友を亡くした人びとが、世の中の新しい枠組みの中で、無我夢中に生きていた。
ひとり息子の健太郎を戦地に失った愛敬稲荷神社の神主牛木公磨も、今では近くに住む五人の未亡人たちと寄り合って、闇米の調達に奔走している。
そんなある夏の日。思いもかけず、死んだはずの健太郎が愛敬稲荷神社にひょっこりと帰還する。境内に笑顔が弾け、人びとは再会を喜び合う。健太郎もプロ野球選手への夢を実現させた。しかしその喜びもつかの間、健太郎の背後には、巨きな黒い影がしのびよっていた・・・・。
全てを忘れかけていた人びとのもとへ、「生きていた英霊」牛木健太郎が贈り届けた、忘れてはならない「記憶」の物語。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
有料オンデマンド配信。事前に会員登録が必要です。(月額2,189円+レンタル3,000円)
私たちは、人を泣かせたり、笑わせたりしている会社です。
座付作者井上ひさしに関係する作品のみを専門に制作、上演しています。
1983年1月に創立し、84年4月『頭痛肩こり樋口一葉』公演で旗揚げ。
以降、新作、再演、こまつ座旗揚げ以前の井上作品も織り交ぜて、出演者・スタッフとも作品ごとに依頼し、その作品だけの一座を組むプロデュースシステムをとり、年平均4~6作品(200~250ステージ)を上演し続けています。
本作品は、 戦争で多くの国民を死に追いやった日本の 指導者たちの責任を問う、「戦争責任 問題」 扱い ますが、 登場人物たちが 使命を忘れるほど演劇 の稽古に のめり込んでしまう滑稽さ 、 人物の正体や思惑が徐々に明らかになっていくスリリン グさ、劇中歌「すみれの花咲く頃」の歌声があたたかな感動を呼び起こす様子など 、 そ の 根底 に あ る の は 時代を越えた演劇讃歌です。
江戸の三大俳諧師の一人と称される夏目成美こと、蔵前札差井筒屋八郎右衛門の寮から四百八十両の大金が盗まれた。容疑者は食い詰め者の俳諧師、小林一茶。蔵前札差会所見廻同心見習いの五十嵐俊介は、お吟味芝居を仕立て、自身が一茶を演じながら、彼をよく知る元鳥越町の住人たちの証言をつなぎ合わせていく。そこに浮かび上がってきたのは、俳諧を究めようともがき、一人の女性を命懸けで奪い合った一茶と宿敵・竹里の壮絶な生き
人は果たして他人になり切れるか東北羽前国平畠藩...そこは一面の紅花の里。瓜二つの紅花問屋の当主になりすまそうとした江戸の金物拾いの徳言葉、習慣を捨て、自ら証明するものを失っていく。騙したつもりが騙されて、替え玉になったつもりの徳を待ち受けていたのは...
そのものの時めいていた過去と、もう滅ぶしかない未来とを同時に匂わせるのです。しかもそれをたったの十七文字でやってのけようとして、わたしたちは骨身を削るのです。芭蕉を「『人はひとりで生き、ひとりで死んでゆくよりほかに道はない』ことを究めるために苦吟した詩人」と、井上ひさしは考えて書き下ろした、芭蕉一門主流の歌仙三十六句にちなんで綴る全三十六景の一代記です。俳聖・松尾芭蕉役に、歌舞伎に止まらず、意欲的