半年の出張を終えて帰ってみたらマンションはもぬけの殻だった。妻とは昨夜も電話で話したが、所詮は携帯電話だ。この部屋で俺と話してると、勝手に俺が信じていただけだったんだ。ガランとしたリビングにはテーブルと椅子だけ。朝顔のツルがビッシリと巻き付いている。壁にも天井にも朝顔が密生している。まるで何年も空き室になっていたみたいに・・・。
なにをやってもうまくいかない男は、妻に先立たれた認知症の父親の面倒をみることになる。しかしその父親がトイレに入ったきりでなかなか出てこない。そこでおそるおそるトイレのドアを開けてみると、そこには、中身のないフニャフニャの父のぬけがらだけが残されていた。その後もさまざまな場所で脱皮を繰り返し、そのつど若返っていく父親は、しまいには男よりも若くなってしまう。
第28回岸田国士戯曲賞を受賞した、北村の代表作の一つ。ミヒャエル・エンデの「モモ」を下敷きにして、人々の想像力を奪う「思う保険」の強盗たちに、職場演劇に打ち込んで、想像力をたくましく使って「楽しく遊ぶ」市役所の演劇部の面々が立ち向かう物語。うらぶれた下町のガード下に座り、所在なげに「お客」を待つ盲目の少女「スモモ」のエピソードが併走する。
