18世紀末。商人が次第に勢力を張り、封建制が揺るぎ始めた頃、各地で重税に耐えかねた農民たちの打ちこわしが頻発し、江戸の盛り場両国にも、虚無と退廃が渦巻いていた。その両国の町を、我が物顔で練り歩く若き芸術家たち。狂歌・戯作で有名な四方赤良、恋川春町、朋誠堂喜三二、宿屋飯盛の前に、一人の若者が放り出された。まだ駆け出しの浮世絵師、歌麿である。歌麿は、難波屋という水茶屋の娘おきたの中に、自分の求めていた
野坂昭如の長編小説「エロ事師たち」(エロごとしたち)をミュージカル化。スブやん、実は酢豚の略。豚のように逞しそうでも、どこか儚く悲しげな風情に由来するあだ名で、戸籍上の姓名は今は公安のみぞ知る。そもそもエロ事師の生業の始まりは、大阪は森宮で文房具屋の親父が声をひそめて言ったあのひと言。どこぞで春画を手に入れてくれへんか。これはもうスブやんにとっては天の声。もはや宿命的に足を踏み込み、写真、本、媚薬
舞台は瀬戸内海に浮かぶ塩飽諸島の一つ、みかげ島。時は1983年の春。本州との連絡船かもめ丸の船長をしている頑固親父仙造の夢は、一粒種の息子・竜太が、幼馴染みで器量好しの娘・春江を嫁に貰い、父親の跡を継いで、かもめ丸の船長になってくれることだった。しかし、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋の着工によって、連絡船は廃止の憂き目を見ることになり、しかも竜太は、いつかこの島を抜け出し、アメリカで一旗揚げたいという野