音楽形式(=フーガ)と精神病理の言葉への着目を特徴とする、太田省吾による〈フーガ〉シリーズの第1作。登場人物は「女1」「女2」「男1」「男2」「人の列」など18人。二人の女性(女1、女2)が、精神科の閉鎖病棟らしき場からの「退院」を翌日に控え、ちぐはぐな会話を続けている。そこにさまざまな情景が去来し、自己と他者との関係性の機微、また自己と自己自身との疎隔の意識が浮かびあがる。
太田省吾が、初期作品以来の「老い」の主題を敷衍して手がけた作品。登場人物は「老人1」「老人2」「少女」「母」など17人。中心人物の一人(老人2)が、母音でしか発話することができないという設定をもつ。ドラマは、二人の老人(老人1、老人2)による性的な記憶と幻想をめぐって展開する。一種の失語状態に陥った二人の声が、ワルツに搔き消されるところで幕切れをむかえる。