きたまりは、2021年より太田省吾の戯曲をモティーフとする創作を続けている。太田独特の劇言語に潜んでいる揺れ動く身体性。さらに多様な楽器の生演奏との相互作用により、新たなダンスを切り拓こうとする試み。『老花夜想』(21年)、『棲家』(22年)に続くシリーズ第三弾は、謡曲「卒都婆小町」などを下敷きに書かれた日本現代演劇の画期をなす戯曲『小町風伝』をもとに、現存する最古の能楽堂・大江能楽堂にて「沈黙の
太田省吾の台詞劇にもとづく創作に挑んだ本作。使用テクストは、ひとりの老人と亡妻の幻影とのはかない交渉をめぐる「棲家」。太田の言語態への新たな応答を試みるきたまりの振付・演出。人物の関係性に潜む官能を静かにあぶり出す由良部正美の踊り。上演の時空間に独特の彩りと陰翳を与える野村誠のピアノと嵯峨治彦の馬頭琴。劇言語×ダンス×生演奏のクロスオーバーによって、生死の境域、記憶の情景が浮かびあがる。