美術家小沢剛の演出は、3.11後の世界に向き合うイェリネクのテキストの複雑さと生々しさにストレートに呼応する、雑多で具体的な体験に満ちたものだった。美術展を模した会場に並ぶのは、イェリネクのテキストがそのまま刻み込まれた絵画や写真、オブジェ。やがて、静かな鑑賞の時間を引き裂くようにバタバタと類人猿が現れる。牛の遺体を引きずり、床に叩き付けて見せる彼は、悲嘆に暮れているのだろうか。やがて、制御の利か
-2020年に世界中を巻き込んだ試練は、パフォーミング・アーツの存在意義を見つめ直す機会となりました。人と人、国と国、ジェンダー、人種、民族、宗教の問題、そして生と死について。これまでも私たちの目前に数多の問題がありましたが、新たな先行きの見えない状況は驚くほどの勢力で私たちを阻んでいます。しかしながら、全世界に同じ問題が降り掛かったこのタイミングこそ、新しい芸術・表現が創生される時なのです。今こ