20世紀美術史に大きな足跡を残した芸術家、アルベルト・ジャコメッティ。極限まで切り詰められた痩身の塑像でよく知られているが、同時に多くの肖像画も残している。そのモデルとなった人たちの中に一人の日本人がいた。彼こそ矢内原伊作、ジャコメッティとの濃密な対話すべてを記録に残した男である。本作品では、伊作の残した対話記録を基盤としつつも、更にその上に別の層、とある父と子――すなわち演出家である危口(木口)
―これは井上ひさしが愛してやまない日本語に、不思議でかわいらしく、輝くような生命を与えてくれた、ある岩手花巻人の評伝劇―詩人にして童話作家、宗教家で音楽家、科学者で農業技師、土壌改良家で造園技師、教師で社会運動家。しなやかで堅固な信念を持ち、夭逝した宮沢賢治。「世界ぜんたいが幸福にならないうちは、個人の幸福はありえない」そう信じた宮沢賢治が夢見たイーハトーボは果てしなく遠かった。
子や孫を殺される悲劇にみまわれるトロイアの王妃・ヘカベを白石加代子が、その美しさが戦争の原因となったヘレネを和央ようかが熱演する。日本人、イスラエル国籍のユダヤ系、アラブ系という三つの文化の俳優が出演し、台詞が日本語、ヘブライ語、アラビア語で展開されていく。
第二次世界大戦後のイギリス。エニグマと呼ばれる複雑難解なドイツの暗号を解読し、イギリスを勝利へ導いたアラン・チューリング。しかし、誰も彼のその功績を知らない。この任務は戦争が終わっても決して口にしてはならなかったのだ。そしてもう一つ、彼には人に言えない秘密があった。同性愛が犯罪として扱われる時代、彼は同性愛者だった。ある日、空き巣被害にあったチューリングの自宅に一人の刑事がやってくる。あらゆる秘密