宮崎の小さな電気工事会社に勤める町村(まちむら)は、40歳を過ぎても独身でボロアパートに一人暮らし。趣味と言えば酒くらいで、ほぼ毎晩記憶を無くすほどに酔い潰れている。ある朝、お決まりの二日酔いで目覚めると、洋服に血がついていた。しかしそれがなんの血なのか分からない。行きつけのスナック「シャンドレ」に行ったことだけは間違いないが、それ以外の記憶がまるでない。果たしてこれは……。町村と彼に関わる男たち
20代後半を迎える朝美、かのこ、ゆず、美緒は元高校演劇部であったことを共通点に、友人関係にある。ある日、顧問の先生の訃報と残された草稿が発見される。「わたしはことばそれ自体になりたかった」「欲望は見えなくされているだけだ」と書かれたそれは、完成された物語ではなく、未完成の言葉の集合体だった。4人は残された言葉を「聞く」ことからはじめようとする。