主婦2 私が言ったのと取りかえる……? ロープでしめ殺したのと……。主婦3 あら、あなた、朝のコーヒーに農薬を入れたんじゃなかった……?主婦2 やめたのよ、それは……。 (主婦1に)言ったじゃない、あれだと体験感が残らないって……。主婦1 そうだった……?主婦2 ロープの場合はね、敵の首にまいて、グッと引っぱった時に、この手の中に、 ギュッて手応えが残るわ……。後になってその時のことを
文学座創立55周年記念
昭和のはじめ、東京下町、袋物製造販売業「近常」の細工場。職人たちが電燈の下、とりとめない会話をかわしながら夜なべをしている。奥では年季明けの職人を祝う赤飯が炊かれ、肴や白味噌の椀の仕度がされている。十年の年季奉公のあと、この日一人前の印電師(高級ななめし皮を扱う職人)の門出を迎える秀太郎。職場を変える夫に従い、今夜未知の北海道に旅立つ女中のおせん。それぞれの「かどで」