「翁」という儀礼曲の中で狂言方が務める役が三番叟。古風な儀式を留める神聖な曲で、日本芸能の真髄ともいうべき究極の舞。野村家の三番叟には洗練された鮮やかな切れ味がある。舞踏・ダンスにも通じる宇宙的な世界観を持ったこの曲を、野村萬斎が舞う。必見である。
「3.11以後の生活」を捉えるため、宮沢童夫が引いた補助線は「1986年の東京」だった。アイドル歌手の飛び降り自殺が盛んに報道され、チェルノブイリ原発事故が世界を震憾させた年の夏、屋上でビンゴゲームに興じる人々の姿は享楽的なようで、どこか乾いた虚無感をも漂わせる。その様子を眺めるのは、「欠落の女」「忘却の灯台守」、そして2011年に生きる映画学校の生徒たち。彼らの視線、撮影された映像をたどりつつ、