清玄の足取りは覚束ない。その時一人の男、権助とぶつかる。権助の目つきはケモノのようである。清玄はその恐ろしい眼から、しかし視線を逸らさずにいる。権助もまた同様に。やがて互いに顔を背け、歩き出した瞬間、完全に点対称で動いた事に一瞬振り向く二人だが、気のせいだとそのまま歩んでいく。戦後復興の救世主、慈悲深き聖人と呼ばれる清玄の孤児院さくら学園。今日、『彼女』はそこから嫁ぐ。彼女が見つめる窓の外を楽隊が
ある夏の日、<友>が<私>を訪ねてくる…登場人物はその二人だけ。長い長い別れ話が始まった。■ものがたり蒸し焼きにされそうなある夏の日。畳の上で部屋着姿のまま床にはいつくばる「私」の前に、高校時代の同級生「友」が現れる。話を聞くと、自転車に乗ってずいぶん遠くから走ってきたという。久しぶりの再会に喜ぶ二人は、じゃれあうように会話を楽しむ。しかし、ふとしたはずみで出る「友」の言葉は、二人の間には埋めるこ
ある夏の日、<友>が<私>を訪ねてくる…登場人物はその二人だけ。長い長い別れ話が始まった。■ものがたり蒸し焼きにされそうなある夏の日。畳の上で部屋着姿のまま床にはいつくばる「私」の前に、高校時代の同級生「友」が現れる。話を聞くと、自転車に乗ってずいぶん遠くから走ってきたという。久しぶりの再会に喜ぶ二人は、じゃれあうように会話を楽しむ。しかし、ふとしたはずみで出る「友」の言葉は、二人の間には埋めるこ
(フライヤーより)暑かった。わけもなく切なかった。うれしいのに涙が出た。夕立に打たれた。虹の下で笑った。いろんなことが駆け抜けたあの夏の雲の下に、おじいちゃんはいた。
てがみ座 第十六回公演。北斎の異才を受け継ぎ、のちに『夜桜美人図』『吉原格子先之図』を描き出すお栄(応為)、その青春期の物語。【あらすじ】江戸後期、黒船が泰平の眠りを覚ます少し前。お栄は鬼才の絵師・葛飾北斎を父に持ち、物心つく前から絵筆を握ってきた。幼い頃から北斎工房の一員として、男の弟子たちにも引けを取らずに、代作もこなし枕絵も描いてきた。けれど本物の絵師になりたいと肝を据えたとき痛感する。北斎