清玄の足取りは覚束ない。その時一人の男、権助とぶつかる。
権助の目つきはケモノのようである。清玄はその恐ろしい眼から、しかし視線を逸らさずにいる。権助もまた同様に。
やがて互いに顔を背け、歩き出した瞬間、完全に点対称で動いた事に一瞬振り向く二人だが、気のせいだとそのまま歩んでいく。
戦後復興の救世主、慈悲深き聖人と呼ばれる清玄の孤児院さくら学園。今日、『彼女』はそこから嫁ぐ。彼女が見つめる窓の外を楽隊が通る。
「あっちですよ、お嬢さん。物語はあっちで始まります」
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
阿佐ヶ谷スパイダースは1996年の旗揚げから、毎回キャストを集めて新作を発表する「演劇プロデュース・ユニット」として活動してきました。これは作品の多様性を高めるためには実に最適な形態であったと言えます。「劇団」と称していなかったからこそ、多くの方々と創作をする機会を得、20年間という年月解散することなく続けて来られたのかもしれません。ですが、沢山の人に支えられ活動してきた20年間で<演劇>を取り巻く状況は大きく様変わりし、同様に我々の思考も変化しました。より「過激」に自分たちの理想を追い求めるため、<より自由に><より幅広く>活動を展開していくために、2017年5月、満を持しあえて「劇団」として活動していくこととなりました。現在劇団員は 36 名。演劇を生業としている者から、会社員・主婦・学生・写真家など様々な業種の劇団員が在籍。緩やかに繋がっているような我々なりの新しいカタチを模索します。
阿佐ヶ谷スパイダースの3人ともうひとりで紡ぐもうひとつの世界■ものがたり 3人とひとりと長い椅子 そしてどうしようもなく夜 ばくばくと 呑まれていくのか 恐るべきものへ
医療事故で妻を失った自称漫画家。失意の漫画家は妻との思い出を燃やしてゆく。すると思い出は消えるが、代わりに強大な腕力が漲り次々と怪事件を起こしてゆく。愛国心溢れる漫画家の言う通り、その悲しみは日本のエネルギーに代わるのか。破天荒の漫画家と彼を取り巻く市井の人々と家族の物語。
ある夏の日、<友>が<私>を訪ねてくる…登場人物はその二人だけ。長い長い別れ話が始まった。■ものがたり蒸し焼きにされそうなある夏の日。畳の上で部屋着姿のまま床にはいつくばる「私」の前に、高校時代の同級生「友」が現れる。話を聞くと、自転車に乗ってずいぶん遠くから走ってきたという。久しぶりの再会に喜ぶ二人は、じゃれあうように会話を楽しむ。しかし、ふとしたはずみで出る「友」の言葉は、二人の間には埋めるこ
何回も言うけど、政治の話じゃねぇんです。■ものがたりファシズム再来の新日本帝国。そこでは一切の表現活動が禁止されていたが、アル中を中心に構成された反体制グループ「山崎」の人々は、収容所に送られることを覚悟でショーの準備を進めていた。しかし仲間の密告によりショーは開演直前に一斉検挙、バレエを踊り続けたリーダーの妻は殺されてしまう(第一部)。特効警察の施設で体制側に協力する元「山崎」の主要メンバー。仲