ロメオ・カステルッチと飴屋法水による、初のダブルビル上演。宮澤賢治のテキストから自由に発想し、それぞれ新作「わたくしという現象」(ロメオ・カステルッチ)、「じめん」(飴屋法水)を発表。二つの才能が宮澤賢治の世界を媒介に響きあう瞬間を、1000人もの観客が野外で同時に体験する。
今回はじめて宮澤賢治の言葉に出会ったロメオ・カステルッチは、イタリア語に翻訳された多数の寓話や詩篇の中から「春と修羅・序」を選んだ。タイトルとなった「わたくしという現象」は、詩集「春と修羅」の冒頭の一節である。
宮澤賢治の世界では、人や動物、植物といった生命、また雲や風とった自然現象、さらに星や太陽、大地といった天体など、森羅万象が等しく交感し合う。そこには、賢治自身が葛藤した人間存在の矛盾や無常に対する苦悩が投影されるだけでなく、それらすべてを包み込むような自然や宇宙との対話も生みだされる。賢治の世界観は、その死から約80年後を生きる演出家の手によって、いかに引き継がれ、現在の私たちの心象風景を映し出すのだろうか? (F/T11プログラムより転載)
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
有料オンデマンド配信。事前に会員登録が必要です。(月額2,189円)
1960年チェゼーナ出身。ボローニャの美術学校で美術とセノグラフィを学んだ後、81年に、クラウディア・カステルッチ(作家、姉)、キアラ・グイディ(ドラマトゥルク)と共に、劇団、ソチエタス・ラファエロ・サンツィオを結成。(ラファエロ・サンツィオはダ・ヴィンチやミケランジェロと並んでイタリア・ルネサンス期を代表する画家で「聖母の画家」との異名をとったラファエロのことである)。90年代の、歴史と悲劇を主題とした作品群(92年『ハムレット』、95年『オレステア』、97年『ジュリオ・チェザーレ』、99年『創世記』)によって、その名を国際的に知られるようになり、高い評価が確立した。01年から04年にかけてなされた『トラジェディア・エンドゴニディア』シリーズでは、ヨーロッパの10都市(チェゼーナ、アヴィニョン、ベルリン、ブリュッセル、ベルゲン、パリ、ローマ、ストラスブール、ロンドン、マルセイユ、最後に再びチェゼーナ)において、著名な劇場やフェスティバルとの共同制作で11のエピソードを上演した。
アヴィニョン演劇祭にはかねてから常連であったが、08年にはアソシエート・アーティストとして、ダンテの『神曲』に着想を得た三部作(『地獄篇』、『煉獄篇』、『天国篇』)を一挙に発表し、大きな成功を収めた。同作品はフェスティバル/トーキョーを含む世界諸都市に巡回し、ルモンド紙では「2000年代、世界を震撼させた10の文化的事件」に数えられるなど、世界の演劇界の話題をさらった。