森村による初のレクチャーパフォーマンスは、日本の戦後史および美術史、森村自身の個人史の3つが交錯する「わたし」の物語である。前半は、今回の撮り下ろしと過去のアーカイブから構成された映像と、舞台中央に置かれた椅子(森村のアトリエから持ち込まれた)の語りによって進む。椅子から発せられる音は、音声変換技術によって青年団の太田宏の声と混成された森村の声である。映像の中で、森村は度々変幻する。そして語りは、西洋と東洋の間で揺らぐ「わたし」の物語に続き、彼がこれまでの作品で「なった」ことのあるマリリン・モンロー、三島由紀夫に言及していく。最後に森村本人が舞台に登場、観客の面前でモンローから三島へと変身し、芸術についての演説を。振り絞るように行った。演説後、何もなかったかのように森村自身に戻り去る様は、観客に強い余韻を残した。
(シアターコモンズ '18レポートブックより転載)
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1951年、大阪市生まれ。京都市立芸術大学美術学部卒業、専攻科を修了。1985年にゴッホの自画像をまねたセルフポートレイト写真を発表。以降、美術史上の名画や往年の映画女優、20世紀の偉人たちなどに扮した写真や映像作品を手がけ続けている。映画出演や文筆活動にも精力的に取り組み、2014年には横浜トリエンナーレのアーティスティック・ディレクターを務めた。
近年の個展に、「Theater of Self」(2013年、アンディ・ウォーホル美術館)、「森村泰昌:自画像の美術史—「私」と「わたし」が出会うとき—」(2016年、国立国際美術館)、「The History of the Self-Portrait」(2017年、プーシキン美術館)がある。
また、パフォーマンス「芸術家Mの『にっぽん、チャチャチャ!』」が、フランスのポンピドゥー・センター・メス、東京のリーブラホール、NYのジャパン・ソサエティで上演された。