この作品の主人公は、原美術館そのものである。1938年に建設された私邸が私立の現代美術館として1979年に開館した。渡辺仁の手になる設計は、アール・デコが香るモダニズム建築の傑作とされる。本作の冒頭に出てくる、宇宙船の内部のような空間など、建物そのものが美術品だといえる。小ぶりな前庭は多くのダンサーからも愛され、数々のパフォーマンスが行われた。しかし残念ながら老朽化により閉館が決定。多くのアーティ
ギリシャ悲劇「バッコスの信女」(エウリピデス作)のテーマや構造を大胆に咀嚼し現代版として描かれた新作劇。一見ふつうの主婦、人工授精によって生まれた獣人、去勢された犬、雌ホルスタインの霊魂たちによる合唱隊(コロス)が歌い上げる音楽劇。現代を彷徨う魂が奏でるドラマが、ヒトと動物の境を揺さぶり、私たちの秘めた欲望を刺激する。
就業人口約28万人、日本のGDP25%を占めるとも言う大手町・丸の内・有楽町エリア。この東京の中心で働く人たちは、何を考え、どのように生きるのか。 本作演出の倉田翠は、このエリアで働く30名以上のワーカーへのインタビューと11名の出演者=ワーカーとの約2ヶ月のワークショップを経て創作。有楽町のオフィスビルを”舞台”にしたパフォーマンスは、出演者と倉田とのコミュニケーションによって育まれる関係性から
芸者文化に着想を得たパフォーマンス作品。磨き上げられた踊りや唄で客人を楽しませる芸者は、職業としては日本各地から消えつつあると同時に、日本の接客や美意識を伝える存在と捉えられています。本作は、この一見あたりまえの「おもてなし」の演出を、俳優の身体を通し観察するこころみです。現役芸者への取材や芸事の稽古などを昨年秋より重ね、文化の継承、エンターテインメント・システムとヒエラルキー、身体的性別と性自認
KAAT × Port B
芸術や都市の祝祭を更新しようとした、19世紀ドイツの歌劇王ヒャルト・ワーグナーによる歌合戦オペラ『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の「上演」に挑んだプロジェクト。8年ぶりの劇場帰還となった高山は、⺠衆芸術として描かれた “歌合戦”を現代のラップバトルに読み替え、“ストリートのオペラ”と呼ばれるヒップホップに接続し、劇場空間を現代の「歌い手」たちに解放した。ストリート化された劇場は、初日に開催さ
森村による初のレクチャーパフォーマンスは、日本の戦後史および美術史、森村自身の個人史の3つが交錯する「わたし」の物語である。前半は、今回の撮り下ろしと過去のアーカイブから構成された映像と、舞台中央に置かれた椅子(森村のアトリエから持ち込まれた)の語りによって進む。椅子から発せられる音は、音声変換技術によって青年団の太田宏の声と混成された森村の声である。映像の中で、森村は度々変幻する。そして語りは、