傍観を許さない、目と心を奪う強靭なダンサーとダンス・BATIK=黒田育世新作。
舞台。大きく円形に張り出し。後方横幅一杯にトタンの壁。
構成。ワイヤで浮遊、穏やかに口笛を吹く育チャンは、母に呼ばれ喜び。しかし、他の子に依る母をみて、激しく嘆き、痙攣。母のスカート下で治まる。が安息も一時。母の心はしばし離れ、子は孤独な自分に出会うこととなる。愛されつつ疎まれる、母を感じながら失い続けていく、痛切な幼児体験。な、母(黒田)、育ちゃん(清家)の関係性を、妄想膨大な分身達とともに描く。
どっぷり「黒田育世」漬け。痛切な魂の叫びなダンスに震えるねこ。泣き、叫び、笑い、さ迷う、少女期の黒田。起伏激しい思慕の念、母との関係性をソロ、群舞で劇的に展開。モチーフを繰り返しながらも、絶えず変化するフォーメイション、陰影ある照明ら効果で失速知らず。蛍光雪舞う圧巻のラストまで、出ずっぱりぶっちぎりで駈け抜け。黒田に付き従う、カンパニの結束力もまた圧巻なり。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
黒田育世振付による作品創造を中心とし、2002年4月設立。02年2月の「ドゥ・セーヌ・サン・ドニ(旧バニョレ)国際振付賞での《ナショナル協議員賞》受賞をきっかけにカンパニーとしての活動を本格化した。敢えてバレエのテクニックを基礎に持ったカンパニーとして、多様化するコンテンポラリーダンスの表現のなかで「踊ること」にこだわった活動を行っている。