ロベルタ・リマは、自らの身体そのものをテーマとしながら、アーティストと鑑賞者それぞれの役割に問いを投げかける作品を制作してきた。そこで用いられるメディアは、写真や映像、インスタレーションなど、さまざまだ。
昨年の秋、リマは一週間にわたって京都・伏見の招徳酒造で女性杜氏の仕事に立ち会い、日本酒の醸造過程だけではなく、ひとりの女性が杜氏となった軌跡に触れた。酒造りを統括する杜氏は長らく男性によって営まれ、酒蔵は女人禁制ともされていた。しかし、その起源にまでさかのぼると、日本の酒造りには女性が深く関わっていた。そしていまや日本各地から女性杜氏の活躍が耳に入ってくる。
このリサーチに導かれ、リマは「水」というエレメントを見出した。日本において「水」がコミュニティに果たしてきた役割とは?回復のメタファーとして、そして女性を旧弊から解放するプロセスに働きかける力として、「水」はどのように機能できるだろうか。『水の象(かたち)』では、同じ空間でインスタレーションとパフォーマンスが行われ、contact Gonzoの塚原悠也もパフォーマーとして上演に登場。パフォーマンスは空間に介入し、インスタレーションはその度に再生成される。
この国で、女性による革命はすでに始まっているのだ。孤独ではなく、コレクティブに。この変化を、いかに語り続けられるのか?
リマを衝き動かす力は、ここにある。
※以上、2018年時点の情報
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1974 年ブラジル生まれ。ウィーン、ヘルシンキを拠点とするオーストリアのアーティスト。大学で建築を学んだ後、ウィーンの大学院にて美術を、2013年には哲学で博士号を取得している。その後は、ウィーン美術アカデミーの講師および准教授として教鞭をとる。彫刻、写真、映像、そして自身の身体を素材としたパフォーマティブな作品を生み出している。それらのテーマは、サブカルチャーと科学、あるいはマスメディアと歴史的文脈、そしてフェミニズム理論の応用など、様々な領域を行き来しながら、社会における芸術の可能性を模索している。ウィーン・フェスティバル、ドナウ・フェスティバルをはじめとする、数々の国際フェスティバルで作品を発表。2007年には「H13賞」のパフォーマンス部門で最優秀賞を受賞している。2018年、彼女の業績と国家への貢献に基づき、オーストリア市民権が授与された。
※以上、2018年時点の情報