仏蘭西の或る森近くの別荘に住む、繪礼奴(母)と禰莉(娘)。父である瑠王は月に一度生活費を渡しに訪れる。いつもと様子の違う瑠王に耐え兼ね、家を出ていく繪礼奴。その態度に業を煮やした瑠王は、禰莉に真実を告白し、「もうここには現れないであろう」と去っていく。帰ってきた繪礼奴に禰莉は真偽を追求するが、正反対の告白を聞かされる。
自分の部屋へ孤独な女の世界へと去って行く繪礼奴。独りになった禰莉は苦行に身を投ぜんとするかの如く叫び続ける―
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1944年2月に青山杉作、千田是也、東野英治郎、小沢栄太郎、東山千栄子、岸輝子ら10名の同人をもって出発した劇団俳優座は、常に高い理想をかかげ演劇の正道を目指し活動を続け、創立80周年に向けてさらに前進を続けます。
近代劇の父イプセンの代表作である「人形の家」。新時代の女性解放の問題作として、多くの論議をわかし世界各国で上演され続けてきた。本作品では、単に人形扱いされて家出するノーラという今までの舞台とちがった千田是也の新しい演出による、人間性開放のノーラのドラマをお贈りいたします。
これは夢遊の物語。彼女らは日本の中国侵略政策の犠牲となり、かつて”満州”と呼ばれた地に送り込まれ、敗戦後四十七年を捨て置かれた激動昭和の落し子である。その残像の中に去来する一人一人の影と呟き合い、罵り合う慚愧と悔恨の綴れ織である。日本および日本人を深くえぐり、人間の暗部をあらわにして喜劇的側面を描出するに得意な藤田傳の劇団俳優座に初めての書き下ろし作品。
スペインの港町カディス。ある夜、彗星の光が町を覆った。数日後、夏の陽光に市場も民衆も活気づくある日、一人の男が女を従えて町に現れ、戒厳令が敷かれる。COVID-19禍、ベストセラーとなったカミュの『ペスト』。彼がその小説をものした翌年、自ら戯曲として発表したのが『戒厳令』だ。ナチスに対抗するレジスタンスの「寓話」とも称される作品。「ペスト」と名乗る支配者に挑む青年医師ディエゴ。果たして……。
とある県立高校。サッカー部の舞原健はモンスターペアレントの母のことを担任・浦川麻由に相談していた。そんな折、スクールカウンセラーの藤堂智絵が着任し、麻由と意気投合。その藤堂の相談室に、いの一番に訪れたサッカー部マネージャー奥野早織は「浦川先生と舞原くんが怪しい」と衝撃の告白をする。教育現場を舞台に、教師と生徒の関係、さらには生徒と親と学校の距離感等を丁寧に紡ぎ、届けるのは――「慈愛」。