「源氏物語」末摘花・蓬生の巻よもとに描かれる女たちの夢と欲望。
窮乏に耐えられず次々と屋敷を逃げ出す女官たちとそのなかでひたすら光源氏を待つ末摘花の姫。原田一樹演出による『しんしゃく源氏物語』は、待つ女として集約される末摘花のイメージを、彼女を取り巻く女達の複数の幻影のなかに解き放つことによって、他者=光源氏と豊かに出会うための〈女性性〉へと変換しようというものである。野外演劇という森のなかの空間を舞台に、男優たちによって滑稽でグロテスクでもある世界がくりひろげられる。
専用の劇場や稽古場を拠点として、俳優、舞台技術・制作スタッフが活動を行う日本で初めての公立文化事業集団。舞台芸術作品の創造・上演とともに、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成を目的とする。2007年に宮城聰が2代目芸術総監督に就任以来、より多彩な舞台芸術作品の創造や国際演劇祭の開催とともに、教育機関としての公共劇場のあり方を重視し、中高生鑑賞事業公演や人材育成、アウトリーチ活動などを展開。
男たちの陰謀と嫉妬、渦巻く憎悪に翻弄されながらしたたかに生きる女――。ルネサンス期のイタリアに実在し、かのヴィクトル・ユゴーが描いた稀代の悪女、ルクレツィア・ボルジア。人を殺めることも厭わない鬼女の顔に、生き別れた息子を想う母の情愛が見え隠れし…。オペラでも知られるルクレツィアの物語を、宮城は大胆にも同時期の日本、すなわち戦国時代後期に置き替えました。舞台は駿府城公園、群雄割拠の戦乱を逞しく生きる
ある日突然、虫に変身してしまった男の運命を通して人間同士の断絶を描いた20世紀文学の傑作を、フォーキンは緻密に計算した音と動き、映像を駆使した舞台空間に構成する。「Shizuoka春の芸術祭」で日本初演された作品をSPACの俳優が演じ、野外劇場を不気味に変容させる。
雨のように降り注ぐ詩のような言葉孤独や苦難の先に待つ少女の幸福現代フランス演劇を代表する劇作家オリヴィエ・ピィが、グリム童話をもとに独自の視点を盛り込んだ3部作の一つ。演出は、アヴィニョン演劇祭への招へいをうけるなど国内外で活躍する宮城聰。継母に毎日無理難題を押しつけられていた少女は森に逃れ、偶然出会った王様と恋に落ち……。シンプルな物語を彩る劇詩、歌と楽器演奏、折り紙をイメージした繊細なビジュア
没後50年を越えた今もなお高い人気を誇る江戸川乱歩。小説『黒蜥蜴』は、明智小五郎シリーズの一篇として1934年に発表されました。日本一のダイヤと宝石商の美しい娘を狙う美貌の女盗賊・黒蜥蜴と、それに立ち向かう名探偵・明智小五郎。誰もが心躍る探偵活劇を、三島由紀夫は、1920年代の大阪から、高度経済成長期の東京に設定を変更。さらに原作では背景にあった恋愛や耽美的要素を前面に押し出すことで、情と知が幾重
