怠け者の太郎が妻へのあてつけに腹を切って死のうとする、その一部始終をシテの太郎が独演。妻も仲裁人も見ていないところで一人、何度も腹を切り損なう太郎。まるでベケットの戯曲を思わせる無目的な行為の繰り返しが、人間の愚かしさを際立たせる。古典狂言としては特異な、不条理を感じさせる作品。
吉野の里に住む盲目の夫は、川上の地蔵に参籠した甲斐があって目が開くが、地蔵のお告げには「連れ添う妻は悪縁ゆえに離別せよ」という条件があった…。人間と運命の対峙を鮮やかに描く、狂言の異色の名作。四十分弱の作品ながら、長編の演劇に匹敵するほどの緊密間に満ちたドラマ性があり、かつて日本の戯曲ベスト3に挙げられたこともある。狂言界の至宝・野村万作の叙情に満ちた演技が堪能できる。
「翁」という儀礼曲の中で狂言方が務める役が三番叟。古風な儀式を留める神聖な曲で、日本芸能の真髄ともいうべき究極の舞。野村家の三番叟には洗練された鮮やかな切れ味がある。舞踏・ダンスにも通じる宇宙的な世界観を持ったこの曲を、野村萬斎が舞う。必見である。
ヴァージニア・ウルフの傑作小説「オーランド」を、主人公オーランドに宮沢りえを迎え、岩切正一郎の翻案、栗山民也の演出で新たに舞台化!数奇な運命を辿りながら、国境を越え、ジェンダーを超え、自由にしなやかに真の自分を探求し続けるオーランド。16世紀から時代を超えて駆け抜けるオーランドを通じて、人生の詩的真実を現代に問いかける。