瀬戸内海に浮かぶ小島に突然巨大な橋がかかる。あまりに巨大すぎたため島民たちは気づかないのか、以前とあまり変わることなく暮らしている。そこに兄弟がいる。母の死を受けて、兄弟のうち一人は変わろうとしている。一人は何もしない。同僚の音楽教師に淡い気持を抱えているにもかかわらず。音楽教師は島の外からやってきた。生まれてこのかた一度も泳いだことはないが水着を一つ持っている。いつそれを着るのかという問題。
千葉雅子×土田英生舞台製作事業
二十年前。暴力団組織の組長の妻だった女と鉄砲玉だった男。二人は抗争の時、ホテルにいた。関係がバレることを恐れた二人は逃亡する。その抗争は男の犯行ということにされ、警察から指名手配されてしまう。年月は流れ。彼らは名前を変えて、とある地方都市で隠れて暮らしている。女は五十歳を過ぎてもスナックで働き、男はヒモのようになっている。行きどころもない二人はしかし仲睦まじく暮らして来た。そんな二人の日常に、忘れ
建物の中に国境線がひかれた─ 何も変わらないはずだったのにね。 ある時ヤツがふざけて言った。『この線から出たらダメってことにしよう』私はわざと線から手を出してやった。ヤツは笑いながらその手を押し返した。そんな戯れを繰り返した。そしてそれからどれくらい経ったっけ?遊びたくなったので、私は笑いながら手を差し出した、すると……ヤツは突然殴り掛かって来た。一切の笑顔を消して。 見えない線。線とは何かを巡る
古民家を再生してつくられたスペース。そこでは楽し気な会話が交わされているが、彼らには共通に抱える事情があった。ウイルス性だと言われているが、詳細は解明されていない。突然死するこの病気は現在、日本とアジアの一部で患者が確認されている。発症した人に対しては隔離政策がおこなれわる。この場所もそのひとつだ。最近、三回目の移住があり、数人が新しく移送されてきた。家族や恋人と別れ絶望する彼らを、前からいた人々