いつも通りの慌ただしいランチタイム。ある契約社員の男は魚を飲み込むと、喉に骨が刺さる。でもそんなことには構ってられない。日々の雑務で忙しいのだ。ところがどんどん骨は成長する。喉を突き破り、肉がつき始める。ほとんど魚人間になった男に、同僚が気づく。たぶん、あなた新人類よ。進化して初めての人間となった男の孤独を目の当たりにした部下は、その姿に昭和の父親の面影を見た!
海岸沿いに透明な壁が建てられた。その壁を通して眺める海は、いくつもの過去が折り重なってみえるらしい。 たくさんの人たちが壁のもとに集まってくる。目の見えない綱渡り師、透明人間の恋人を探す女性、窓ガラス清掃をする元役者、スノードームをつくる 観光客、ミノタウロスとくだんのあいだに生まれた未来のみえないこども。「私、フチになりたいんだ。麦わら帽子のフチとか、ルパンが盗む絵画の額縁とか、コップのフチ子と
向井川淋しいが、初めて演劇をやったのは小学校4年生のころだったのね。っていっても、あたしはこのころまだ淋しいと出会ってないから、本当にそうだったかは知らないんだけど……。あたしが淋しいと出会うのは、もう少し先の未来。つまり、いまから話すのは、淋しいにあとから聞いたことと、あたしのこうだったらいいなって願望がミックスされた物語。だから、正確には『向井川淋しいが、初めて演劇をやったのは小学校4年生のこ
いつ高シリーズvol.7
この雪が止むまで、図書室にいよう。テーブルを本でいっぱいにして、つまみ食いみたいにちょっとずつページをめくりながら過ごそう。朝についての印象的な書き出しからはじまる女子高生の話、気だるそうな主人公が日常のちょっとした謎を解いていくミステリー、異世界に転生したら全部うまくいくファンタジー。お気に入りのセンテンスを拾い集めながら代わる代わる本を読んで いく。そのうちウトウトしはじめて、気づいたら睡眠。