医療事故で妻を失った自称漫画家。失意の漫画家は妻との思い出を燃やしてゆく。すると思い出は消えるが、代わりに強大な腕力が漲り次々と怪事件を起こしてゆく。愛国心溢れる漫画家の言う通り、その悲しみは日本のエネルギーに代わるのか。破天荒の漫画家と彼を取り巻く市井の人々と家族の物語。
KAATキッズ・プログラム2022
おとなもこどもも楽しめる「KAATキッズ・プログラム」の2022年新作は、天国と地獄の分かれ道で、なくした記憶を探すおしばい。2020年に上演を予定していたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった本作が、2年の時を経てついに上演を迎えました。作・演出は、本作で自身初のキッズ・プログラムを手がけた松井周、そして主人公は、日本演劇界を代表する俳優・白石加代子が演じています。
四人の女性、軍人、夫たち。理想と忘却の狭間で生きる人間の姿が滑稽に描かれるチェーホフの最高傑作『三人姉妹』。三浦基の初期の代表作をまったく異なる演出で再上演。四つん這いで床の上を這いずり回り、組んず解れつしながらでなければ言葉のやり取りのできない登場人物たち。生き続けなければならない人間の、持て余された人生たちがそのまま運動量に変換され、充満する。世界一フィジカルな静劇。
『光のない。』に続き、地点と三輪眞弘が挑むイェリネク第2弾。戦争の代替としてのスポーツ、身体から逃れられない人間の宿命を、急傾斜の芝生のフィールドで反復横跳びする俳優たちが表現。ドレミパイプを1本ずつ携えた14名の合唱隊がスポーツに絶対不可欠な観衆を体現した。ギリシア悲劇からボディビルダーまで、イメージを詰め込むだけ詰め込んだ原作テキストを身体を使い切って応えた地点随一の大作。
東日本大震災とそれに続いて起きた原発事故を題材にした、ノーベル賞作家エルフリーデ・イェリネクのテキストを舞台化。暗く、湿った場所に取り残され、演奏を続ける「第一ヴァイオリン」と「第二ヴァイオリン」の対話は、5人の男女によって演じられる。時には客席を指差し「わたしたち」「あなたたち」を強調する発語は、登場人物が死者であり、音であり、光であり、放射能でもあることとも響き合いつつ、主体/当事者の遍在を示
『忘れる日本人』に引き続き、震災後の日本人の姿を描く地点×松原俊太郎第4弾。かつてあった美しい山の隣に放射性廃棄物の山ができたという戯曲の設定を空間に落とし込んだ黒光りする急斜面の舞台で、汚染された土地で暮らす家族をなまはげをモチーフにして演じた。叫ぶことを怠けてはいけない、という信念のもとおくる新しい〈家庭劇〉とも言える本作は、松原俊太郎の第63回岸田國士戯曲賞受賞作となった。
平成18年度文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として、イギリスロンドンで研修した西海真理の企画・出演公演。アメリカ南部の小さな町の美容院。「生まれつきの美女なんて存在しない」。今日もかしましいほどのおしゃべりの花が咲き始める。1987年初演、映画化でも話題を呼んだ不朽の名作が今ここに鮮やかに蘇る。
平成28年度文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として、イギリスのDerby Theatreで1年間研修した大澤遊の演出公演。田舎に住むジャックは架空の弟「アーネスト」を訪ねる名目で、たびたびロンドンへ遊びにでかけていた。ロンドンでは「アーネスト」と名乗り、友人アルジャノンのいとこであるグウェンドレンに恋い焦がれるジャック。あることからアルジャノンはジャックの嘘を見抜き問いつめると、田舎ではジャッ