『光のない。』に続き、地点と三輪眞弘が挑むイェリネク第2弾。戦争の代替としてのスポーツ、身体から逃れられない人間の宿命を、急傾斜の芝生のフィールドで反復横跳びする俳優たちが表現。ドレミパイプを1本ずつ携えた14名の合唱隊がスポーツに絶対不可欠な観衆を体現した。ギリシア悲劇からボディビルダーまで、イメージを詰め込むだけ詰め込んだ原作テキストを身体を使い切って応えた地点随一の大作。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
多様なテキストを独自の手法で再構成・コラージュして上演する。俳優の声と身体を通して劇空間を創出。言葉の抑揚やリズムをずらす独特の発語は「地点語」とも言われ、意味から自由になることでかえって言葉そのものを剥き出しにする手法はしばしば音楽劇とも評される。代表は演出の三浦基。所属俳優は現在6名おり、すべての作品に出演している。 2005年、東京から京都へ移転。2013年、本拠地・京都に廃墟状態の元ライブハウスをリノベーションしたアトリエ「アンダースロー」を開場。レパートリーの上演と新作の制作をコンスタントに行う。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。チェーホフ2本立て作品をモスクワ・メイエルホリドセンターで上演、また、2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品『コリオレイナス』を上演するなど、海外公演も行う。2017年、イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞作品賞受賞。(法人名:合同会社地点)
四人の女性、軍人、夫たち。理想と忘却の狭間で生きる人間の姿が滑稽に描かれるチェーホフの最高傑作『三人姉妹』。三浦基の初期の代表作をまったく異なる演出で再上演。四つん這いで床の上を這いずり回り、組んず解れつしながらでなければ言葉のやり取りのできない登場人物たち。生き続けなければならない人間の、持て余された人生たちがそのまま運動量に変換され、充満する。世界一フィジカルな静劇。
ロシアの劇作家チェーホフの〈四大戯曲〉のひとつ。47歳の中年男性、鬱憤でいっぱいのワーニャとその姪・ソーニャの物語。田舎屋敷で展開する愚痴の応酬、惨めな失敗に終わるピストル騒ぎ……。地点による初演は2007年。2018年の新演出では、チェーホフによるサハリン島までの旅の記録『シベリヤの旅』をコラージュ。ルポルタージュの先駆けとも言われるこの手記により、チェーホフの冷徹とも言えるまなざし、その視線が
魅力的な女に惹かれるという〈自然〉に抗いイヴォナとの結婚を切望するフィリップ。この奇妙にねじれたゴンブローヴィチ流愛の物語の主人公を演じるのは、オーディションを経て出演を決めた共に二十歳の若いふたり。リズムとエネルギー溢れる地点の新しいレパートリーとなった。真空パックされた古典劇が息を吹き返し、軽やかなステップを踏みながら悲劇へ加速していく物語に、ヴァツワフ・ジンペルの音楽が伴走する。
戯曲中にちりばめられた数々表現が、慣用句として今もロシア語に生き続けているというグリボエードフの名作喜劇『知恵の悲しみ』。モスクワをこき下ろす主人公チャーツキイの長広舌と人々が入り乱れる舞踏会シーンが魅力。固有名が意図的に排され、だれがだれなのかわからない人混みの中で、次第にスケープゴートが特定され噂話が蔓延していく。喜劇的な軽さに満ちたダンスフロアは音楽と光に満ち、愚かしくも見続けてしまう大作。
