『忘れる日本人』に引き続き、震災後の日本人の姿を描く地点×松原俊太郎第4弾。かつてあった美しい山の隣に放射性廃棄物の山ができたという戯曲の設定を空間に落とし込んだ黒光りする急斜面の舞台で、汚染された土地で暮らす家族をなまはげをモチーフにして演じた。叫ぶことを怠けてはいけない、という信念のもとおくる新しい〈家庭劇〉とも言える本作は、松原俊太郎の第63回岸田國士戯曲賞受賞作となった。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
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多様なテキストを独自の手法で再構成・コラージュして上演する。俳優の声と身体を通して劇空間を創出。言葉の抑揚やリズムをずらす独特の発語は「地点語」とも言われ、意味から自由になることでかえって言葉そのものを剥き出しにする手法はしばしば音楽劇とも評される。代表は演出の三浦基。所属俳優は現在6名おり、すべての作品に出演している。 2005年、東京から京都へ移転。2013年、本拠地・京都に廃墟状態の元ライブハウスをリノベーションしたアトリエ「アンダースロー」を開場。レパートリーの上演と新作の制作をコンスタントに行う。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。チェーホフ2本立て作品をモスクワ・メイエルホリドセンターで上演、また、2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品『コリオレイナス』を上演するなど、海外公演も行う。2017年、イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞作品賞受賞。(法人名:合同会社地点)
闇商売で成功した雑誌編集者の田島は、ふと、田舎から妻子を呼び寄せ、まじめに生きて行こうと考えた。そのためには何人もの愛人と、きっぱり縁を切らなければならない。彼は「美女を探して妻の役をしてもらい、愛人の元を訪ねて別れを告げる」ことにする。果たして彼はこれ以上にない適役としてキヌ子に出会う。闇市で担ぎ屋をしている怪力で大食い、鴉声でケチで下品な絶世の美女だ。「愛人の前では口は利かず頷くだけにしろ」と
四人の女性、軍人、夫たち。理想と忘却の狭間で生きる人間の姿が滑稽に描かれるチェーホフの最高傑作『三人姉妹』。三浦基の初期の代表作をまったく異なる演出で再上演。四つん這いで床の上を這いずり回り、組んず解れつしながらでなければ言葉のやり取りのできない登場人物たち。生き続けなければならない人間の、持て余された人生たちがそのまま運動量に変換され、充満する。世界一フィジカルな静劇。
ロシアの劇作家チェーホフの〈四大戯曲〉のひとつ。47歳の中年男性、鬱憤でいっぱいのワーニャとその姪・ソーニャの物語。田舎屋敷で展開する愚痴の応酬、惨めな失敗に終わるピストル騒ぎ……。地点による初演は2007年。2018年の新演出では、チェーホフによるサハリン島までの旅の記録『シベリヤの旅』をコラージュ。ルポルタージュの先駆けとも言われるこの手記により、チェーホフの冷徹とも言えるまなざし、その視線が
言わずと知れたシェイクスピアの悲劇『ハムレット』をモチーフに、東西を分断されていたドイツで活躍した劇作家ハイナー・ミュラーが書いた、上演不可能とも言われる伝説的テキスト『ハムレットマシーン 』。地形が、家族が、暴動が、役者が、アメリカが、血と肉が、たった15ページで展開される、これでもかというイメージの応酬。暗く陰鬱な言葉からユーモアを抽出する地点の「歴史劇的牧歌劇」!