慶応3年、日本の民衆たちの間で突如巻き起こった「ええじゃないか」。この歴史的事件を元に映画監督・今村昌平が1981年に映画化。そのシナリオを原作として藤田傳が脚色。舞台は、猥雑な見世物小屋が立ち並び、はぐれ者や身売りされた娘たちが生きる江戸 “向う両国”。悪所とも言えるこの一帯に、自由を求めて群がる人間たち。そのエネルギーを利用して維新推進を企てる倒幕派の策謀。人間が人間臭くうごめき、からみあう群像スペクタクル。演出は鬼才・金守珍。音楽はソウル国立オペラ劇場元芸術監督の元一。むき出しのバイタリティーを現代社会に投げかける。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
「1980」と書いて「イチキュウハチマル」 、通称ハチマル。
横浜放送映画専門学校(創設者=今村昌平 現:日本映画大学)を母体とし、演劇科卒業生が創立メンバーとなって、文字通り1980年に結成。首都圏劇場での新作公演の他、演鑑公演・学校公演、ルーマニア・モルドヴァ・ブラジル・韓国等での海外公演を実施。また若手俳優陣を中心とする劇団アトリエでの実験的創作など、さまざまな形態で舞台作品を発表しながら、ハチマル的オリジナリティと演劇表現のさらなる可能性を追求し続けています。
30年前に蒸発した父親の足取りを追う息子。浮かんでは消えていく幻影を追い、父と子の空白の時間は徐々に蘇っていく…。藤田傳が第29回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した秀作を、モルドヴァ演劇の旗手ウジェーヌ・イヨネスコ劇場芸術監督ペトル・ブトカレウが演出。長い間のソ連支配、独立後はヨーロッパ最貧国とも呼ばれたモルドヴァの視点から、藤田傳が描いた社会底辺の悲しみを極彩色の鮮烈さで描き出した舞台。
『大往生』は、永六輔が25年に亙り、全国津々浦々を旅する中で耳にした無名人、普通人、一般人たちの言葉の数々から「老い」「病い」「死」について、どこかで誰かが語った名言・箴言を選び出し、一冊の本にまとめあげた“言葉の書庫”である。本作品は、ある架空の養老院を舞台に、人生の熟達者たちのおしゃべり、つぶやきをちりばめながら、測ることのできない命の重さ、生きることの楽しさ、そして何より、人間が創り出した最
江戸南郊、麻布が原—異界と人界、男と女。妖かしたちの深い情は、時空を超えて生命を継承していく。作家・小林恭二が自身の小説を戯曲化した“カブキ”的、新・都市伝説。
『下弦の夏』—ひとりの軍国少年としてあの時代を体感した劇作家・藤田傳が、昭和19年の夏を再検討しながら、日本人の精神の行方を問う“戦争の記憶の物語”。慶寿苑—入所資格。寄辺、身寄りなき七十歳以上の高齢者。戦争の残骸。便りなし、来訪者なし。本日1名死去。消え入る蝋燭のようなこの施設に、ぽつりぽつりと記憶の花が開き始める。