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さびれた芝居小屋の淋しい楽屋。遠くから客入れの演歌が流れ込んでくるやいなや、大衆演劇女座長・五月洋子は、座員一同に檄を飛ばし始める。開演前の化粧支度の最中も、口上や十八番の演目である「伊三郎別れ旅」の母と子が再会する場面の稽古に余念がない。そこへ捨てた息子との対面を、と出演依頼を携えたお客がやってきた・・・。うってかわって、クリスマス間近の芝居小屋の楽屋。大衆演劇の座長・市川辰三は。夜の部も迫った
「放浪記 」 「 浮雲 」 など 庶民の目線で 名作を残した林芙美子の戦中 ・ 戦後を描く音楽評伝劇 。 「 放浪記 」 でたちまちベストセラー作家となった林芙美子 の 日中戦争が迫る 1935年 昭和 10年から第二次大戦を経て 、 47歳で 心臓麻痺で急逝する戦後 1951年 昭和 26年まで の 16年間の軌跡をたどります 。
戦後"命"の三部作 第3作
井上ひさしが長年願った『父と暮せば』の対になる作品を残す、という構想を受け継ぎ、名匠・山田洋次監督が製作し大ヒットを記録した映画『母と暮せば』。長崎で被爆した母と亡き息子の幽霊の交流をつづった監督初のファンタジー作品は深い感動をよびました。舞台『父と暮せば』、『木の上の軍隊』に次ぐ、井上ひさし「戦後命の三部作」第三弾として、母と息子、そしてすべての「命」をつなぐ、深く温かい物語をお届けします。
チェーホフ原作「三人姉妹」のオペラ化。器楽編成は、ヴァイオリン、アコーディオン、ピアノという珍しい編成。
国民的はなし家、円生と志ん生。うちひしがれた戦後の日本人を心底笑いで励ますことになるこの二人の大名人は、敗戦のときを満洲南端の都市大連で迎えていた。ソ連軍の侵攻と同時に大連は封鎖され、日本国からは見捨てられる。二人がふたたび祖国の地を踏んだのは、じつに六百日後のことであった。 戦禍の街を命からがら逃げまどう二人のはなし家。巡りあうのは、まるで地獄のような情景ばかり。住む家もなく、食べる物もなく、し
中間管理職で定年退職したばかりの山崎は、 新宿から電車で1時間半という距離にあるニュータウン『くぬぎ台』に住んでいる。 始発で家を出て終電で帰宅するようなサラリーマン時代には、それほど気にもとめなかったが、定年を迎えてから、何もすることがない日々に何と退屈なところだろうと思ってしまう。山崎は時間つぶしに町内のウォ―キングを始め、同じ定年散歩仲間が出来た。彼らとの交流を通して踏み出す定年後の新たな一
「なあ、お前誰だよ?」惑星アイドル「CHaCK-UP」の定期ミーティング。来月に迫ったライブイベント「E.T.L vol.6」に向けて、皆が意欲を燃やしている。リーダーのアマミヤは首をかしげた。知らない男がひとり混ざっている。「誰って…ミナミじゃん。なに言ってるの?」メンバーの目が一斉にアマミヤを見つめた。何が起こっている?ミナミは?俺の知ってるミナミはどこだ!?「なんだよ、お前ら本当に忘れちゃっ
『父と暮せば』で原爆投下後のヒロシマを描いた井上ひさしが、桜隊の史実をもとに原爆投下直前の広島の3日間を舞台に、戦時下でも演劇を愛し、芝居の力を信じ、「一人ではできないことをしている、一人の人間の力をはるかに超えたなにか大きなもの、なにか豊かなもの、なにかたのしいもの、それを望んで、それをたしかに手にいれている」と身も心も捧げた人々の苦難と喜びを、笑いと歌声を交えながら描く“演劇讃歌”の物語。
村山知義生誕100周年記念
1部払暁 1940年7月27日日本領事館に通過ビザを求めてユダヤ人たちが殺到。日本領事杉原千畝とその妻幸子は?2部ホームワーク 1992年セルビア人武装勢力とボスニア共和国軍が戦闘。セルビア人の村にムスリム人家族が肉親を頼って逃げてくる。
新劇から出発して新派で活躍した初代・水谷八重子。初演は水谷八重子十三回忌追善・新派特別公演として1991年に上演された井上版〈昭和と女優〉ともいえる傑作戯曲を、初の民藝+こまつ座提携で客演も迎えて上演。舞台は戦前から戦後にかけての台東区柳橋。とある病院で新派を愛する人びとによって語られる八重子の芸と生きざまが井上ひさし流のユーモラスな筆致で活写され、新派劇の代表的な舞台や名台詞も散りばめられて物語
河上肇の登場しない井上ひさしの「貧乏物語」社会問題としての資本主義・・・「貧乏ってなに?」と問う人すべてに捧げる可憐な女性六人の事情と人生。時は大正5年...第一次世界大戦の好景気の最中、誰もが少し浮かれて、本当の''貧乏''を見ようとしなかった時代に、ベストセラーになった河上肇の『貧乏物語』。 その河上肇の周りには、こんなにも素敵な女性たちがいた。私たちはおんなじ問題の前にいる。こまつ座24年振
こまつ座と座付作者みずからが、愛してやまぬ戯曲『人間合格』。文学史上不滅の小説家太宰治の生涯をいきいきと描いて、はじける笑いとあつい感動が劇場をつつみこむ。
海峡にのぞむ理髪店「山猫BARBER」。店の親方は昔カミソリで細君のノドを掻っ切ったとか。だけど細君も娘さんもちゃんといるようです。 北海道の炭鉱でガス爆発にあって温泉療養に行くという青年、なぜここへ来たのか自分でもわかりません。久しぶりのお客にカミソリを手にした親方、見習いに手伝わせますが危なっかしくてしょうがない。別役ドラマ独特の滑稽きわまるやりとりと時間の交錯、そこから不気味な記憶がよみがえ
古典的先住民姿の少女が語る、いつとは知れない、しかし先祖代々伝えられてきた物語ーその年は天候不順で食糧の蓄えができないまま厳しい冬がやってきた。危機に瀕した集団のリーダーは、口減らしのため、お荷物となっていた二人の老女を棄てる決定を下す。それは老人を敬い大切にする伝統に背く決断であった。彼らは食糧を求めて旅立っていく。棄てられた二人の老女は、悲しみ、恨み、怒り、そして絶望の淵に立たされる。しかし死
進駐軍の占領下で、今日を生き抜くために人びとは闇の売り買いに必死だった。親を亡くし、子を亡くし、夫を亡くし、友を亡くした人びとが、世の中の新しい枠組みの中で、無我夢中に生きていた。ひとり息子の健太郎を戦地に失った愛敬稲荷神社の神主牛木公磨も、今では近くに住む五人の未亡人たちと寄り合って、闇米の調達に奔走している。そんなある夏の日。思いもかけず、死んだはずの健太郎が愛敬稲荷神社にひょっこりと帰還する
昭和庶民伝三部作 第二作
進駐軍の占領下で、今日を生き抜くために人びとは闇の売り買いに必死だった。親を亡くし、子を亡くし、夫を亡くし、友を亡くした人びとが、世の中の新しい枠組みの中で、無我夢中に生きていた。ひとり息子の健太郎を戦地に失った愛敬稲荷神社の神主牛木公磨も、今では近くに住む五人の未亡人たちと寄り合って、闇米の調達に奔走している。そんなある夏の日。思いもかけず、死んだはずの健太郎が愛敬稲荷神社にひょっこりと帰還する
大正七(一九一八)年十二月二十六日、宮沢賢治は、故郷花巻から東京に入院している妹・とし子の見舞いを目的に上野行きの夜行列車に乗り込んだ。その手には大きな革のトランクが握りしめられ、たくさんの願いが詰め込まれていた。「大好きな音楽を聞き、エスペラント語の勉強をする。そのためには家の重圧から逃れ、父の庇護の下を離れなければならない。そして何よりも真の生き方を探すことである」賢治は、東京に理想郷を求めて
1951年、瀬戸内の小島。広島で被爆し九死に一生を得た栗原学は、教師の仕事を続けながら将来のことを思い悩む。朝鮮戦争の軍需景気に支えられている島の生活。同僚や東京で働く同級生の言葉。そして教え子の存在…。1957年に劇団民藝で上演され大きな反響を呼んだ傑作を、青年劇場ならではのアンサンブルで、さわやかに描き出す。
「笑い」というものにすべてを賭けた江戸の戯作者たち。書くことに魅せられ、コトバと心中した男たちの数奇な運命を異才・劇団桟敷童子の東憲司が新作書き下ろし。東憲司版『戯作者銘々伝』がここに完成
消滅寸前の旅一座、女座長・中村梅子 起死回生の大芝居
実話から生まれたいのちの寓話が今、語りかける。ある南の島。ガジュマルの木に逃げ込んだ兵士二人は、敗戦に気づかず、二年間も孤独な戦争を続けた――人間のあらゆる心情を巧みに演じ分け、観る者の心に深く刻みつける山西惇が、再び本土出身の"上官"を演じる。注目の新キャスト・松下洸平は、柔らかく、おおらかな存在感で島出身の"新兵"に挑む。歌手・普天間かおりをガジュマルに棲みつく精霊"語る女"に抜擢。琉歌に乗せ
昭和15年、朝鮮・水原(スウォン)郡。日本政府による「創氏改名」の任にあたる日本人青年と、親日家でありながら改名を拒んでいる地主。その家に700年に渡り伝えられる、一族の系譜がつづられた「族譜」に圧倒されながらも説得を重ねるが、やがて地主の周辺で日本政府による圧力がかかり始める…。朝鮮半島における「創氏改名」政策の真実を描いた原作を舞台化。国家と文化のありようを問う。
かつて庶民の希望であり、羨望の的だった「大衆演劇」移り変わる時代に翻弄され衰退する一座。その楽屋から漏れる光と影...そして夢。人情・縁...人生。数々の名台詞が、舞い散る雪のように降り積もる。女座長・中村梅子一座は、人気の老舗大衆演劇一座だった。しかし時代はまさに戦後の娯楽ブーム。役者は次々と去り、わずかに残った役者にも不平不満が渦を巻く。問題山積みの一座を救おうと、座長が運命をかけて演じた一世
―禁忌の愛にゆれる、日の浦姫の半生を描く平安一大絵巻―井上ひさしが文学座、杉村春子への当て書きで書き下ろした初期戯曲『日の浦姫物語』をこまつ座初上演。重厚な俳優陣とスタッフを迎え贈る日の浦姫の生涯を巡る一大絵巻!
ぼんぼん盆の十六日に地獄の地獄の蓋があく ────夭折した明治の女流作家・一葉を取り巻く5人の女性たちが織りなすこの世とあの世の境界線。景気で浮かれる上層と下層の間で、美しい文体で時代ともに生き抜いたあらゆる階級の女性達の頂上から底までを見た一葉...。24歳6か月の若さでこの世を去るまで多くの名作を発表した夭折した天才女流作家の"奇跡の14か月"とは...。
その昔マグロ景気に湧いた宮崎・油津でテキ屋を仕切っていた金丸一家。羽振り良く暮らしていたが、終戦の混乱期、愚連隊にショバを荒らされ町を追われる。組長の重蔵は妻と娘だけを連れ細々と露天商をしながら暮らしていた。しかし油津に残してきた先代組長が「もう一度ショバを取り戻したい」と口にしていることを耳にする。重蔵とは反対に気性の荒い性格の妻・敏子は辰蔵の願いを叶えようと発奮。20年ぶりに油津へと帰るのだっ
1945年8月9日、戸坂潤は獄死した。戦争が終わるわずか数日前のこと。時は遡ること13年前。「野蛮で反知性的なファシズムに対し、我々はあくまでも知性を武器にして闘い抜く」と、戸坂潤は岡邦雄、三枝博音と共に唯物論研究会を立ち上げた。しかし「危険思想を広める恐れがある」と特高警察の監視が始まり、やがて集会禁止から執筆禁止に。それでも彼の楽天性が奪われることはなかった。
東京裁判三部作 第二作
『夢の泪』は井上ひさしが新国立劇場のために書き下ろした「東京裁判三部作」の第2作目として、2003年に上演されました。「東京裁判三部作」は、01年『夢の裂け目』、06年『夢の痂』とともに、「戦争」そして「東京裁判」を当時の市井の人々の生活を借りて見つめ、「東京裁判」の、そして「戦争」の真実を改めて問うた作品群です。
魯迅は、いまさら言うまでもなく、アジアを代表する世界的文学者の一人です。たとえば、1927(昭和2)年、ノーベル賞選考委員会は上海へ特使を送ってきました。その年の文学賞を受けてくれるかどうか、魯迅の胸中を打診にきたのです。さまざまな不幸な理由から、魯迅はこれを断りますが、とにかく彼はそれくらい注目されていたのです。魯迅は、それから10年とは生きておりませんでしたが、ここに不思議なのは、彼の臨終に立
浅見光彦と若者達に託された、戦後半世紀の誓いとは?「旅と歴史」編集部の依頼で長野県中野市を訪れた浅見光彦とフリーカメラマン・小内美由紀は八幡神社を巡礼している飯島という老人に会う。不思議な言葉を残して去った老人は、その後秋田で死体となって発見された。老人の足跡を辿って全国の八幡神社を訪ねるうちに、元文部官僚のこの老人の戦後の生き様と秘密を知ることになる。そして、今後は高知で文部省出身の若きエリート
1994年、戦後49年目の年に誕生した二人芝居『父と暮せば』。1995年より日本各地を巡る全国公演を開始。戦後60年を迎えた2005年までに、通算368ステージを数え、『紙屋町さくらホテル』『リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン』の原点ともなった。女優栗田桃子を迎えて、装いも新たに上演。次世代に語り継ぎたい、井上戯曲の傑作にしてこまつ座のライフワーク。
昭和九年十二月二十四日月曜日。東京本郷区曙町にある理学博士寺田冬彦邸。主、冬彦がしかつめらしい顔で煙草をくわえている。別に、怒っているわけではない。普段のことである。まわりには妻りんをはじめ、個性豊かな家族が太陽系宇宙のように取り囲む。そこに突然彗星の如く事件が飛び込んできた!小春日和に雲が差し、雨からやがてしんしんと降る雪に変わる。招き猫が見守る中、寺田家の喜怒哀楽の一週間が過ぎてゆく。
舞台は1975年、神戸の沖縄料理店「てだのふあ おきなわ亭」。料理店を営む夫婦は親戚を頼り、沖縄から神戸に移住し、そして “ふうちゃん”こと芙由子が生まれた。芙由子の両親は太平洋戦争を沖縄で経験し、沖縄が日本に返還される前に神戸に移ったが、芙由子は神戸で生まれたので沖縄のことはあまり知らなかった。芙由子が六年生になった頃、父が心の病気になった。病気の原因はどうやら沖縄と戦争にあるらしいと芙由子は思
劇団青年座創立50周年記念公演 第1弾
島村抱月、松井須磨子らが活躍する芸術座を退座した澤田正二郎は大正6年新国劇を旗揚げする。新国劇頭取(楽屋の世話係)の市川段平は元は歌舞伎の殺陣師、澤田の為に役に立ちたいと願うが、リアルな立ち廻りの確立を目指す澤田は型にはまった段平の殺陣を受け入れようとしない。ある出来事をきっかけに、ようやく活躍の場を与えられた段平が殺陣をつけた「国定忠治」は大阪で大ヒット、新国劇は念願の東京へ進出することになる。
1945年8月下旬。連鎖街に立つ「今西ホテル」の地下室では、二人の劇作家が絶体絶命の窮地に陥っていた。ソ連軍の命令で、なにが何でも芝居をつくらねばならぬホテルの支配人とボーイ長。「木を隠すなら森に。ウソを隠すには、もっと大きなウソを」大車輪で台本を書き上げ、総員で稽古にかかる。知恵のありったけを絞りだした「大ウソ」芝居のできばえは…、そして恋の行方は…
次世代に、そして全世界に語り継ぎたい明日への再生の物語「人類史の折り返し地点」 ―― 井上ひさし2020年紫綬褒章を受章した演出家・鵜山仁が捧げる、終戦から3年後のヒロシマを舞台に父と娘が織りなす命の会話
他のジャンルと競い合うことのなかった時代に幸せな演劇人生を送ってきた舞台女優の母親と、演劇はもはや求心力を持たないとする夫との間で揺れる娘。これは社会と演劇、生きることと愛することの意味を探る芝居。
昭和もまだ穏やかななりし頃、東京は下町、老舗の飴菓子製造販売店「ささなみや」放蕩者の主人・久四郎は一向に店を顧みないばかりか、外では一体何をしていることやら。でも元気で働き者のお内儀・ちからによって何とか店は切り盛りされているようです。どんなことが起ころうと持ち前の負けん気の強さで吹き飛ばしていくちから。しかし時がたつにつれ、戦争に向かって世間の雲行きも怪しくなってきました。店は勿論、成長した子供
生涯をかけたテーマとして戦争責任の問題を追及した木下順二の『夏・南方のローマンス』は、1987年に宇野重吉演出で初演、2013、18年に丹野郁弓の演出により上演しその今日性がふたたび鮮烈に蘇りました。庶民の目線から戦犯裁判を見つめることで、日常的で人間的な人びとの愛や苦悩が壮大な構想の下に描かれています。
佐賀県唐津市の郊外で先祖代々の土地を守り続けてきた専業農家。息子はアメリカに留学し、佐賀の農業大学で講師を務めながら農山漁村と都会の交流をめざす新しい観光業に燃えている。そんな折、農業高校からホームステイで受け入れた高校生はコンビニ依存で…。クローン牛に遺伝子組み換え、ダイオキシンに環境ホルモン。農業を取り巻く環境が大きく変わる中、食の安全を求めて「身土不二」の教えが再び浮かび上がる…。
女優松井チエ子、謎めいた死から一年。築地東京劇場に集められた四人のスター女優たち!!果たしてこの中に彼女を殺した犯人はいるのか・・・・・・?うだつがあがらない万年下積役者を刑事に仕立て、松井チエ子殺人事件真犯人追及劇『豚草物語』の幕が開く。映画をこよなく愛した井上ひさしのもう一つの舞台版『キネマの天地』。「蒲田行進曲」にのせてこまつ座決定版でいよいよ上演。
青年・津島修治の嘘に爆笑し、作家・太宰治の真実に涙あつく溢れる、あの評伝劇が、演出鵜山仁と精鋭揃いのスタッフ、実力派キャストで甦る。昭和五年春。東京帝国大学に合格した青年、津島修治のちの太宰治。「この世が今のような涙の谷であってはならぬ。われわれはこの世から涙を退治する民衆の友でなければならぬ」と帝大生の佐藤、早大生の山田、三人は生涯の友情を誓い合う。そこに青森から大地主である津島家の番頭、中北が
桜咲き乱れる頃、東北の、とある田舎の村はずれ、どこからともなく歌声が聞こえてくる。 弥生のあられ 皐月のつゆは 働き者の味方ども しゃれた女房と 馬鹿とのさまは 根気がさっぱど つづかない・・・・・・白い花びらをつけた桜の木に挟まれたあばら家に住む、賢く美しい働き者の娘ちか。娘に一目惚れしたとのさまは、お侍医をお供に、桜の木に隠れて様子をうかがっている。優しいけれども気後れしがちのとのさまは、その
東京下町、戦前からの老舗甘味処「笹本」。女将・諒子はかつて広告代理店に勤めるキャリアウーマンだった。時代はバブル景気真っ只中、男と肩を並べバリバリ仕事をこなし恋も遊びも贅沢に楽しんだ。四十を目前にした頃、両親が相次いで亡くなり、ようやく立ち止まった諒子。気づけば恋の相手は皆結婚、バブルも終わりお祭り騒ぎの毎日は終わった。諒子は退職し、両親が残した店を継ぐ決意をした。それから十数年、この小さな町での
ガンコ一徹、職人気質の社長が倒れた!!跡を継いだ息子は古い体質を改善しようと大改革を宣言!!が、従業員とのミゾは深まるばかり。働けど働けど報われない毎日。リーマンショック後の東京は大田区の町工場を舞台に、じいちゃん、ばあちゃん、父ちゃん、母ちゃん、若者たちが大バトル。工場のおやこ三代を軸に様々な価値観がぶつかり合って、見えてきたものは・・・・・?
井上ひさしが描く、漱石的学校での不思議なひと時。晩年の漱石に多大な影響を与えたと言われる「修善寺の大患」。作風のみならず本人の死生観にまで影響を与えた三十分間の意識の空白の中、「坊っちゃん」「三四郎」「それから」「薤露行(かいろこう)」「こころ」などの多彩な漱石作品を思わせる登場人物たちが、各々が抱える「どうしようもない淋しさ」を埋めるために動き出す。"夏目漱石"評伝劇が鵜山仁の手によりこまつ座初
「……がさつだったが、物事すべて明るく輝いていたあの時代。物資は乏しかったがお互いの間に優しさが満ち溢れていたあの創世期。お腹には何も入っていなかったが、胸にはちきれそうな、理想と希望があったあの頃。」──あの『キャッツ』がロンドンで誕生する十年前に、井上ひさしが世に送り出した、ネコだけが主役のミュージカル『十一ぴきのねこ』。現代演劇を牽引する長塚圭史が、この作品で井上戯曲を初演出にして初ミュージ
身は妓生の娘にありながら、ひとたび結ばれた両班との青年との愛を信じ、牢につながれながらも、再び逢える日を待つ春香。死をも恐れぬ春香の「愛」をとおして見えてくるものは、何か。日本植民地時代、朝鮮のとある町の芝居小屋で「春香伝」が演じられる・・・。
中国の大河・長江の中流に位置するある都市。この街のもっとも平均的な2LDKの団地に、縁もゆかりもない若い夫婦と、定年退職した元小学校の女教師が同居している。長江に臨むこの団地は誰が名付けたか「団結団地」。ベランダからの眺めは一級品なのだが、背に腹は代えられずいやいや同居しているそれぞれにとって、眺めどころではない。何と言っても年の差は如何ともしがたく、生活のリズム、習慣、価値観の違いは日常的な争い
趣向がすべて!喜劇、ミュージカル、日本語、推理劇、そしてどんでん返しの連続好きなものをこの一作にすべて注ぎ込んだ井上ひさしの劇作の原点が今ここに――。♪日本人による日本人のための和製音楽劇(ミュージカル)♪東北へのオマージュを込めて10年振りの上演。1985年のこまつ座初演より『日本人のへそ』を見つめ続ける栗山民也が最上級の愛を捧げ、大胆・巧緻を極めた演出により綺羅星のように輝く俳優陣が躍動する。
そのものの時めいていた過去と、もう滅ぶしかない未来とを同時に匂わせるのです。しかもそれをたったの十七文字でやってのけようとして、わたしたちは骨身を削るのです。芭蕉を「『人はひとりで生き、ひとりで死んでゆくよりほかに道はない』ことを究めるために苦吟した詩人」と、井上ひさしは考えて書き下ろした、芭蕉一門主流の歌仙三十六句にちなんで綴る全三十六景の一代記です。俳聖・松尾芭蕉役に、歌舞伎に止まらず、意欲的
時代が押し付ける重い空気そんな流れに負けず懸命に生きた庶民たちの物語刻一刻と暗い時代へと突入していく中、求められるのは"軍國歌謡"か"敵性音楽"か。太平洋戦争前年からの一年間を描いた井上音楽劇の代表作。
創業60周年を迎えようという老舗のとんかつ屋「たきかつ」。家業には見向きもしなかった長男の琢己が、決意も新たに店を継ぐという。ついては大々的にリニューアルも行うらしい。店が変わってしまうことに一抹の不安を覚える母・幸子とベテランの料理人・金村は、将来への期待も同時に持っていた。そんな折、常連客の一人が留学生を連れて来て…。小さなとんかつ屋に起きた、ささやかだけど深い変化の物語。
わずか一週間で草案を作成したGHQ民政局員たちがいた。ジャズの名曲にのせて描く日本国憲法誕生の舞台裏。1946年2月4日、東京日比谷のGHQ(連合軍総司令部)の一室に集められた25名の民政局員は、22歳のベアテ・シロタをふくめ20代から50代の多士済々。機密厳守の命令の下、直ちに立法、人権、天皇などの7つの小委員会に配属される。今、まさに日本国憲法を生み出す作業が始まろうとしていた!2015年、別
金もない、女にもモテない、さえない葬儀屋の主人・早川は、女房に仕事も家庭も夜の営みもダメだダメだと攻められてばかり。そんな早川のもとに、美しい女が現れて、自分は“死神”だと名乗るのでした。美人過ぎる死神の名前は“ロロ”。ロロは早川に金儲けの話を持ちかけます。死神が寝込んでいる病人の枕元にいる時はその患者は死ぬけれど、足元にいれば病人は助かる、死神を追い払う呪文を教えるから、金持ちの病人を助けて金儲
『放浪記』で一躍文壇の寵児に躍り出た女流作家・林芙美子。奔放に生きてきた人生を写すが如く、原稿用紙に向かっていた。世間の風は戦争へ突入すべく、日増しにきな臭さが強まりはじめていたそんな中で、芙美子は人生の切り売りだけで小説を書くことに行き詰まりを感じていた。そして、時流にあわないという理由で出版した本が発禁処分されてしまう。芙美子につきまとい、金儲けを企むプロデューサー三木孝は、"戦さはもうかると
『熊楠の家』は戯曲の達人小幡欣治氏が、南方熊楠の後半生を人間味豊かに描き、第19回菊田一夫演劇賞を受賞しました。『根岸庵律女』、『浅草物語』など小幡氏が劇団民藝に書き下ろした9作品のうちの記念すべき1作目。1995年初演の本作は2017年に丹野郁弓の新演出で上演。熊楠とその家族たちに光をあてた、ユーモアあふれる評伝劇。
時代から棄てられた廃駅のホームに、彼らが待つ幻の列車ははたしてやって来るのか?ある山あいの駅、すでに廃線となっているその駅に1人の女性がたたずんでいる。彼女は、この近くの丘にある精神病院へ、入院しているはずの弟を捜しにやってきたのだった。彼女がその廃れた駅で出会う、病院の医師、看護婦、そして患者たち。彼女の出現が、山あいの病院で孤独を抱えながら生きている彼らの間に、少しずつ波紋を広げていく。
敗戦直後に作られた幻の”大島憲法”に想を得た近未来劇。とある島。戦争が終わって、突然本土から独立を言い渡される。独立歓迎派と、本土あくまで一体派に分かれる中、こっそり本土に逃れようとする人々も。島長(しまちょう)は、早速憲法作成に着手する。権利をめぐって侃々諤々、喧々轟々!長い会議のそのかげで利権をめぐる企みもうごめき始める。陰謀術策の矛先は、やがて島長の家族に向けられて…。国と島と家族をめぐる近
原爆投下から3年後の広島を舞台に、父と娘の精緻な対話が織りあげる、ほのかな恋の物語。しかし核兵器の、人類の存在をも脅かすそのおぞましい力は、可憐な娘の心にも大きな傷跡を残していた。生きる喜びを失くしてしまった娘にふたたび希望の光を蘇らせるために、いま、父は全身全霊で娘に語りかける。