とある町の郊外。春とはいえまだ寒い夜。プスイギンとシルワーの二人の若者は、酒場で知り合った娘たちと飲み明かそうとこの村までやってきたのだが、娘たちに放り出されて一夜の宿を求めて歩き回るはめに。最終列車は出てしまい、寒さに耐えかねた二人はサラファーノフ家の扉をたたく。
サラファーノフ家はサラファーノフと娘のニーナ、息子のワーセンカの三人家族。他に泊めてくれる家はなく、プスイギンは思いついた出まかせの嘘をつく、「実は、自分はサラファーノフとさる女性の間に生まれた”息子”であったのだ」と……。
サラファーノフは、街のフィルハーモニーのクラリネット奏者で、生涯をかけた一曲の名作の作曲にとりかかっている-しかし、これらのことは彼の唯一の心の支え、つまりは寂しい嘘だったのだ。彼の仕事は、今では葬列やダンスの席で演奏することであり、彼の作品もまた、決して第一ページ目から先には進まない幻の名曲だったのである。
そんなサラファーノフに頼れる新しい息子が飛び込んできたのだ。はじめは疑うサラファーノフであったが、遂にはその出まかせの嘘を信じこんでしまう。それに、プスイギンはサラファーノフにどことなく似ているのだ。
やがて、物語は予想されない思わぬ方向へ進展していく……
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
劇団創立から85年を超える老舗劇団。日本の創作劇、和物、海外戯曲と幅広く上演。
クロアチア・ザグレブに建つ蔦の絡まる邸を舞台にした4世帯の女たちを中心にしたコス一家の物語。1945年11月、第二次世界大戦後パルチザンだったローズは、ナチスの協力者だったブルジョワジーの家を手に入れる。そこは彼女の母親モニカがかつてメイドとして雇われていた家、そして生後2日のローズを抱えたモニカを追い出した家族の家だった。そこでローズは国防軍だった夫と生まれて間もない赤ん坊のマーシャと母親のモニ
2002年に文学座としては初の「ファミリーシアター」として企画制作。「アリババと四十人の盗賊」や「船乗りシンドバッドの冒険」など誰もが知っている物語がつぎつぎとシンプルな舞台装置から泉のように湧き出てくる文学座版『アラビアン ナイト』は、日本の現代演劇史に鮮烈なインパクト与え、大きな感動を持って迎えられました。演出の高瀬久男が斬新なアイディアで織りなした舞台は、観るものを美しいファンタジーの世界に
4年の歳月を経て、あの三人が帰ってきた。平成12年度第55回芸術祭賞 優秀賞受賞作品『缶詰』続編!更迭の危機を迎えたハコザキ製靴の社長、箱崎壮一郎(角野卓造)が腹心の部下二人(田村勝彦、たかお鷹)を従え、反撃作戦を立てるべく伊香保温泉の旅館に籠もったのが4年前。映画製作の関係者に間違えられ、町をあげての大騒動に見舞われたあの悪夢の数日は、ようやく忘れ去られようとしていた。月日は流れ、仲良く(?)清
<あらすじ> 1886年(明治19年)、東京・麻布鳥居坂の白河義晃子爵邸。当主の白河義晃は急速に西洋化する日本になじめず、酒浸りの日々を送っていた。ある日、外務卿・井上馨の書生と白河家の家令雛田源右衛門の間に一悶着が起きた。雛田は時代遅れのちょん髷をからかわれたばかりか、因循姑息な白河子爵は華族の資格なしと罵倒されたのである。それを聞いた義晃は怒り心頭に発し、これまた時代遅れの討ち入りを決意。しか