白石加代子「百物語」第二十四夜
白石加代子「百物語」第二十四夜
一夜の公演で、一演目というのは初めての試みである。また、この作品は丁度八十話という節目でもある。胸突き八丁というけれど、まさに頂上がかすかに見え始めた八合目に、鴨下信一はこの作品を選んだ。
鴨下さんから上がってきた台本を読んで、これは「百物語」の代表作の一つになるなと思った。登場人物がそれぞれいろんな思惑があり、悪党ばかりであくが強い。この人間臭い世界は白石加代子とぴったりあう。原作と細かく読み比べてみたが、鴨下信一のテキレジが実に見事である。例によって、円朝の作品は、実に入り組んで複雑に様々な筋が絡み、交錯する。
それを鴨下信一は、すべてのプロットを生かしながら、整理し、登場人物を浮き立たせ、芝居どころを重ねて行く。
円朝は世界の演劇の中でかなりの上位にランクされるのではないだろうか。つまりそこに人間の生な肉声が色濃くあるのだ。言葉の中にどれだけ生な人間が棲んでいるのか、それがその作品の価値ではないだろうか。この公演を見た中村充さんが、素敵なお手紙を下さった。
中村さんは、「百物語」が始まったばかりの時、NHKのラジオ深夜便という番組に呼んでいただいた時の、キャスターである。それ以来、中村さんは欠かさず、「百物語」を見て下さり、時には辛らつで、苦いことをすっぱりと言って下さる。
「円朝その人の噺を聞いている気分になりました。無論、円朝の寄席芸を知る術はありませんが、客を長時間飽きさせない、その芸は見事だったと何かで読んだ覚えがあります。
”おんな円朝”という言葉が頭に浮かびました。今回の白石さんの『怪談牡丹燈籠』は、正にそういう感じでした。これまでの百物語シリーズは、殆ど聞かせていただきましたが、一番ではないでしょうか。円朝の語り口の良さと、加代子さんの語りがどんぴしゃりで合った気が致しました」
(百物語シリーズ総集編パンフレットより転載)
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1990年設立。主な作品に、大竹しのぶ「奇跡の人」、古田新太・生瀬勝久「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」、西城秀樹・鳳蘭・市村正親「ラヴ」、天海祐希「ピエタ」などがあげられる。(メジャーリーグHPより)
白石加代子「百物語」特別編
白石加代子「百物語」は1992年に始まった。そしてやっと80本に手が届くところまでやってきた。特別編は、その中から特にお客さんの支持が熱かった作品を取り上げて、構成し直したものである。今回はその二回目となる。まず、一本目は、三遊亭円朝の「江島屋騒動」「江島屋騒動」は原題が「鏡ヶ池操ノ松影」という作品で、さまざまな因果話によって構成されたかなり長い物語であるが、今回はその中の抜き読みである。時間にし
「モンテ・クリスト伯」という題材を選んだのは、かっこいい言葉がきら星のようにちりばめられているからだ。「モンテ・クリスト伯」というストーリーを再現するのではない。アレクサンドル・デュマが書いた言葉を、百何十年か前に書かれた瞬間の鮮度で再現したいのだ。おしゃれでカッコいい、スピーディーでスリリングなコンサートのような舞台として上演しようと思っている。
白石加代子「百物語」アンコール公演
明治から現代の日本の作家の小説を中心に、「怖い話」「不思議な話」を、白石加代子が立体的な語りと動きで演じる人気シリーズ白石加代子「百物語」のアンコール公演。恐怖とユーモアとが絶妙に味付けされた人情怪談、宮部みゆき作「小袖の手」と、一冊の本に挟まれた時空を超える栞をめぐる不思議な恋の怪談話、朱川湊人作「栞の恋」の2本立て上演。
白石加代子「百物語」第十七夜
演出の鴨下さんが病気になられて、「百物語」が一時中断し、久しぶりの岩波ホールでの公演である。鴨下さんは「百物語」のコンセプトについて次のように語っている。「捨てるだけのものは全部捨てた、ヴィジュアル面もそうですが、第一覚えなくていいわけでしょ、だから記憶力も捨てた。相手役も捨てた。演劇の要素をどんどん捨てていった。だから僕は、演劇にはなりっこないと思っていた。ところが、そうやってどんどん捨てていっ