白石加代子「百物語」特別編
白石加代子「百物語」特別編
白石加代子「百物語」は1992年に始まった。そしてやっと80本に手が届くところまでやってきた。
特別編は、その中から特にお客さんの支持が熱かった作品を取り上げて、構成し直したものである。今回はその二回目となる。
まず、一本目は、三遊亭円朝の「江島屋騒動」
「江島屋騒動」は原題が「鏡ヶ池操ノ松影」という作品で、さまざまな因果話によって構成されたかなり長い物語であるが、今回はその中の抜き読みである。時間にしてほぼ40分、しかしその短い時間の中で、めまぐるしく人間の人生が変転して行く。
演出の鴨下信一は子供の頃、名人と言われた人の、講談や落語、浪曲、歌舞伎の芸をたくさん体験したそうである。この「江島屋」では、その名人の音を白石加代子を通して再現しようと試みた。
大衆の心を魅了した語り芸の継承もこの「百物語」の大切なコンセプトである。
「白石さん、前から三列目くらいの人を相手にするつもりでしゃべって下さい」と一言ずつ、言葉の強弱、スピード、声の高さ、感情の込め方などを細かく指示していった。
現代の私たちが失った、かつての日本語がどんなに繊細で情緒豊かなものであったかという発見の連続の稽古だった。
もう一本は、筒井康隆の「五郎八航空」
台風の中を赤ん坊をせおったおばさんのオンボロ飛行機に乗り合わせてしまった二人組の恐怖の体験。まあ、笑った笑った、こんなにも客席が笑いに満ちた舞台というのはちょっとないのではないだろうか。
そしてまさにこの頃から、「恐怖」が売り物の百物語シリーズはいつのまにか笑いが売りの舞台になり、かつてピータ・ブルックが「火を噴くドラゴン」を評し、世界の演劇人を震撼させた悲劇女優白石加代子は、喜劇女優と呼ばれるようになり、「百物語」は「ギャグ物語」と陰口を叩かれるようになっていったのである。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1990年設立。主な作品に、大竹しのぶ「奇跡の人」、古田新太・生瀬勝久「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」、西城秀樹・鳳蘭・市村正親「ラヴ」、天海祐希「ピエタ」などがあげられる。(メジャーリーグHPより)
マクベスは夢を見る。栄光と権威、王冠の夢を。しかしそれは引き返せない悪夢だった。そしてその王冠に手をかけたときから、坂道を転がるように、破滅への道を一直線に突き進む。
白石加代子「百物語」第二十四夜
一夜の公演で、一演目というのは初めての試みである。また、この作品は丁度八十話という節目でもある。胸突き八丁というけれど、まさに頂上がかすかに見え始めた八合目に、鴨下信一はこの作品を選んだ。鴨下さんから上がってきた台本を読んで、これは「百物語」の代表作の一つになるなと思った。登場人物がそれぞれいろんな思惑があり、悪党ばかりであくが強い。この人間臭い世界は白石加代子とぴったりあう。原作と細かく読み比べ
白石加代子「百物語」第二十二夜
筒井康隆「時代小説」は前からやりたかったものである。筒井さんにその旨を申し上げると、「え!ほんとうにやるの?」といった反応だった。つまり「読んでも、お客さんには何の事かさっぱりわからないからやめたほうがいい」とお考えだったのだ。そして実際稽古に入って、これは鴨下信一でないと出来ないものであったと思い知らされた。鴨下はこう語っている。「『時代小説』、これは日本語のリズムで聞くべきものだ。リズムは地口
シェイクスピア・ゼミの8人がゼミの旅行でイギリスのお城に出かけ、そこにある古い屋外劇場で「リア王」の芝居をやろうとする。シェイクスピアの言葉は我々をどこに連れていくのか。8人の旅行者はいつのまにか、人間の心が嵐のように渦巻いているシェイクスピアの世界を旅し始めている。人間の想像力がたどり着いた淵といわれる「リア王」の世界を、8人の俳優とともに探検し、体験する・・・。