ケムリ研究室 (ケラリーノ・サンドロヴィッチ 緒川たまき) 第3弾。
STORY
何十年か、百数十年か先の、どこかの国のお話――。
地球の人口は以前の3割ほどに減少。繰り返された極度の寒暖により、植物はほとんどが死滅。生き残った動物たちは人間の食料とされ、今や目にすることは珍しい。
残ったのは昆虫、限られた鳥類、爬虫類、深海魚に変種の貝。
極端な気候の中で生活するため、都市では巨大な冷暖房装置が稼働。人々が暮らす建物の中にはダクトがめぐらされている。
そして人々は、中央管理局に監視されながら日々を過ごしていた。
過酷な日常を生き抜くため、シグネ(水野美紀)やロミー(依田朋子)たちのように、娼婦として働く女性も少なくない。
そんな娼婦の一人、ノーラ(緒川たまき)は、“夫”のヨルコ(音尾琢真)と暮らしている。
彼女が住むアパートの大家・ダグ(福田転球)は妻のウルスラ(犬山イヌコ)、母親のチモニー(木野花)と娘のナスカ(奈緒)の三人暮らし。なかでもウルスラは、なにくれとなくノーラを気にかけてくれる。
ダグのアパートに住んでいるのはポー(山内圭哉)やブービー(松永玲子)など、奇妙な人物ばかり。ナスカの恋人・アーチー(永田崇人)も母のアルマ(平田敦子)とこのアパートに住んでいるが、やはりこの母子もどこか歪な関係に見える…。
そして、ノーラのもとに、中央管理局から新たな指導観察員リュリュ(北村有起哉)が訪れる。ヨルコを失ったノーラに次第に好意を抱くリュリュだが、古くからの友人で同僚のバンカーベック(近藤公園)に、ノーラから離れなければ再教育を受けることになると忠告を受ける。
一方、裏社会の顔役ゴーガ(山内圭哉)はシグネの夫を監禁し、彼女を情婦にしていた。
ゴーガはある日、部下のナンダ(野間口徹)を従え、音楽家のボルトーヴォリ(篠井英介)とともに、廃品ロボットの回収ステーションを訪れる。そこでノーラの過去に触れたボルトーヴォリは興味を示し、ゴーガはボルトーヴォリの要求に応えることを約束する。
さらに気温を下げようとする政府に暴動を起こす市民。人々の記憶が損なわれる案件の頻発。ウルスラもノーラに関する記憶の一切を失い、彼女に冷たく接するようになる。ショックを受け、居場所を失ったノーラの前に現れるリュリュ。
組織を裏切った男と厄介者になった女。追われる身となった二人は手を取り合い、町から逃げ出す――。
「ケムリ研究室」とは、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と女優・緒川たまきが2020年に結成した演劇ユニットである。