―冬教え
世界の果ての荒々しい土地を漂泊しよう
オオカミの国が私の国だ。
(アメリカ先住民スー族のコトバより)
冒頭で聞こえるのは、レニングラードに生まれアメリカ合衆国に亡命した詩人、ヨシフ・ブロツキー(1940-1996)の詩の朗読。ジャニス・ジョップリンの「サマータイム」で踊る雪雄子のソロ舞踏。
舞踏家。1972年大駱駝艦創成に紅一点として参加。1975年、北方舞踏派と共に出羽三山山麓へ移住。小樽での活動を経て、1993年津軽へ単身移住。東京生まれながら、北国の生命力を現出する舞踏家として高い評価を受けており、その創作の原点を、津軽に息づく原初そのものの命との出会いに置いている。
出羽山麓、小樽を経て津軽に移住し、北の大地を身に沁ませて踊る雪雄子が、NHK仙台放送局開局七十周年記念企画展「東北の形象ー20世紀からの発見」で踊る。この時初めて現れたという赤い下駄の少女は、雪雄子の裡で成長しつづけているという。
50年にわたり舞踏家として活動している雪雄子の北国での生活を追う民族誌学映像作品。この映像は森と人、記憶から生命のかたちへの賛歌であり、森羅万象の宿る場で、日常の生活のなかから踊りが生まれる瞬間を記録したものである。2021年、米国地理学会や日本文化人類学会等で上映された。
白鳥と一緒に帰りたいと、思った。こう、こう、こう銀色の空の下聲の余韻が 静まり返った沼地に小さく 羽撃くー沼地へ私の躰を浸しに、私の躰を還しに。