明治七年、東西の話し言葉がテンデンバラバラだった頃。文部省官吏の南郷清之輔に「全国統一の話し言葉を制定せよ」という命令が下った。この日から、南郷家は、お国訛りをめぐって大騒ぎ。清之輔は、話し言葉の全国統一の前に、まず我が家のお国訛りによる大混乱におそわれる。カタコト英語しか喋れないピアニストの奏でる幻の「小学唱歌集」にのせて展開する、言語学的な悲喜劇の末、ついに清之輔が辿り着いた「文明開化語」とは
“雀の子 そこのけそこのけ 御馬が通”俳人小林一茶を知らない人はいないだろうが、人間小林一茶を知る人は少ない。十五才で信濃柏原から江戸に出た後の行動は謎に包まれたまま、いつしか俳諧の道で頭角を表してくる。ようやく五十二才で結婚するが、いとしい子たちは次々とこの世を去るのだった。“蝉鳴くや つくづく赤い 風車”だが一茶の人生は大きくうねりつづける。江戸と信濃柏原、二つの土地の間で一茶の愛が、欲が、生
昭和の団塊世代を象徴する様な男、通称・九ちゃんは、同僚には疎まれるが何故かワンマン社長にはかわいがられている。社長は頑固一徹だが憎めない男、その妻は器量の大きな昭和の女だ。ある日、その社長が亡くなった。通夜の席、胸の内を熱く語る九ちゃんの姿を見た若い社員は、何故彼の仇名が「九ちゃん」なのかを知る。合理性と効率が求められる社会に変わりゆく中で、社長と九ちゃんと妻の間には、懐かしい昭和の人間味、友情が
昭和九年十二月二十四日月曜日。東京本郷区曙町にある理学博士寺田冬彦邸。主、冬彦がしかつめらしい顔で煙草をくわえている。別に、怒っているわけではない。普段のことである。まわりには妻りんをはじめ、個性豊かな家族が太陽系宇宙のように取り囲む。そこに突然彗星の如く事件が飛び込んできた!小春日和に雲が差し、雨からやがてしんしんと降る雪に変わる。招き猫が見守る中、寺田家の喜怒哀楽の一週間が過ぎてゆく。
現代スペイン演劇連続上演No.1
あぶない時代とあぶない街には美しい物語が潜んでいる。この物語は80年代後半のマドリッド旧市街に生れた現代のスペイン論であり、長い牛睡から覚めた現代のウエストサイドストーリーである。
平成21年度文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として、イギリスで1年間研修した上村聡史の演出公演。2005年7月7日、イギリスロンドンで起こった地下鉄・バス連続爆破テロ事件。56名の人生を一瞬にして奪い、世界中を震撼させた。死亡した人の中には4名の実行犯も含まれていた。舞台は事件の前、数日間のそれぞれのドラマである。近親相姦にふける姉弟、報告書の作成に追われるキャリアウーマン、女性教師にしつこく