2012年に発表した『現在地』より、演劇に対する態度を大きく変化させた岡田利規。そこには、震災とそれによって引き起こされた日本の社会状況がまぎれもなく影響しています。今作『地面と床』で、その変化がもたらしたフィクションへの探究をより深めて描き出したのは、"そう遠くない未来の日本"を舞台にした死者と生者の物語。さらに、これまでにも取り組んできた音楽とパフォーマンスの関係性をより発展させるべく新たなアプローチに挑み、チェルフィッチュにしか作れない「音楽劇」を目指しました。岡田利規とチェルフィッチュの、新機軸にご期待ください。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニーとして1997年に設立。
独特な言葉と身体の関係性を用いた手法が評価され、現代を代表する演劇カンパニーとして国内外で高い注目を集める。その日常的所作を誇張しているような/していないようなだらだらとしてノイジーな身体性は時にダンス的とも評価される。
舞台は、衆議院選挙が行われた2009年8月30日とその前日。高層マンションの購入を控えたある裕福な夫婦とその周辺の人々をめぐって、彼らの抱える漠然とした不安が語られる。この時代における「幸福」とは何かというテーマのもと、格差社会の見えにくい現実を、平易なテキストと、おざなりな表象行為を排した身体によって浮き彫りにしていく。本作で、それまでのチェルフィッチュの方法論を次なる次元に押し進め、時空間をよ
現代演劇×現代音楽=新たな“音楽劇”新たな“音楽劇”はどのように生まれるのか——。これまでも様々なかたちで“音楽劇”に挑んできたチェルフィッチュ/岡田利規と、世界的作曲家・藤倉大。現代演劇と現代音楽、それぞれのトップランナーがタッグを組み、2023年にウィーン芸術週間にて初演を迎えた本作。俳優は歌唱とは異なる手法で、そして音楽は情景や心情を描くものとは異なる在り方で、相互に作用することで、言葉と音
2011年の東日本大震災をきっかけに岡田利規の演劇観は「フィクション」の有効性を探求することへと舵を切り、社会の中の緊張感や断絶を寓話的に描いた「現在地」(2012年)と「地面と床」(2013年)を発表しました。『部屋に流れる時間の旅』では、ふたたび震災後の社会背景を主題としながらも、社会での断絶が生じる以前の個々人の心の葛藤や恣意的な感情をきわめて細密に見つめ、拡張し、これまでにない新たな表象
重大なミッションを果たすべく、イン・ビトゥイーン号が、四人の乗組員と一体のアンドロイドを載せて、宇宙を漂泊しています――『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』では、内容的な〈リアリティ〉と形式的な〈リアリティ〉、どちらの〈リアリティ〉も複数、並列的に提示されます。演劇において、舞台の上で、せりふがある言語で発される……。そのことの意味・機能についても、『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』では複数のそれら